昔、『蝶は死者の魂を運んでくれる』なんて話を聞いたことがある。
その日は、季節は春なのにとても暑かったのを覚えてる。
父と母の友人の結婚式で新郎新婦の家族や親戚、そして私達家族以外の友人たちでお祝いをしていた。
神社での結婚式なんて初めてで少し興味があったが、和楽器の笛の音で耳がイカれかけた…。
その後私の親の友人の娘さん…まぁ私の友達なんだけど、そのこと軽く喋った後、集合写真をとることになったんだ。
私と友達は下から三段目にたって、前には父の友人がいて、真ん中には新郎新婦方っての集合写真(他にもいっぱいいたけどあまり覚えてない)。
「奥さん!旦那さんの写真が見えないのでもう少し上に!」
そう言われ、友達の母は写真を少し上に上げた。
…友達のお父さんは少し前に病気で亡くなって、もし病気になっていなければここにいたんじゃないかと思った。
父の友人たちは皆仲良く、自分が小さい頃からの仲だったから少しさみしくもある。
「撮りますよー!」
その声に私達はカメラマンのもつカメラのレンズを見た。
パシャリッ!
一枚目が撮り終わり、二枚目を撮ろうと準備するカメラマン。
するとヒラリと私の目の前をモンシロチョウが飛んできた。
そのモンシロチョウは結婚式が始まる前からずっと私達の近くを飛んでた蝶だった。
ひらり ひらりと眼の前を飛ぶ蝶はゆっくりと降下し…
ピタッ
と前にいた父の友人の頭に止まった。
それが可笑しくて可笑しくて、思わず吹き出してしまいそれと同時に周りも気づいて爆笑の渦。
とまり木にされた友人も気づいてはらったが、蝶はまたひらり ひらりと周りを飛んでどこかえと飛んでいった。
まるで皆を笑わせるためにわざとそうしたかのように止まった蝶はもう見えなくなっていた。
私はもしかして?って思ったけど言わないことにした。
でも、本当に友達のお父さんが祝いに来たとしたら…
ああ、それはとても、素敵なことだと思うな…。
どんな物語も、頑張った人が報われないのは好きじゃない。
どんな理由であれ、頑張った分は報われてほしい。たとえ目的が達成されなくても、とても遠い話だとしても。
私達の知らない所でも…。
その人物にとっての、『ああ、良かった』と思える終わりが一番いい。
私はそんな『幸せな終わり(ハッピーエンド)』が一番好き。
貴方の優しさになんで救われたのだろう。
一人孤独だった私達に手を差し伸べてくれた。
誰にも理解されない自分を「それはお前の個性だ」と肯定してくれた。
貴方は何時も私達のために無理をして、それでもそれを顔に出すこともなく「お前らはお前らの成すべきことをしろ、それ以外は俺がなんとかしてやるさ」という。
どうか無理をしないでほしい…と、いっても貴方は「心配するな」といって無理をするのでしょう。
ならば頼ってください、私達を使ってください。私達は貴方に救われました、何度も、何度も。
貴方の優しさに救われたのです。
今度は私達が貴方を助けます。どんなに汚れようとも。
私達はハッカーチーム『蒼き炎の鎖〈デス•チェーン〉』。
貴方〈ボス〉と私達に繋がれし鎖は決して、壊されることなど無いのだから。
悪夢を見た。
相棒が死んだときの夢だ。
俺を庇ってデジモンの攻撃を受けた。当たりどころが悪かったのだろう。相棒はそのまま起き上がることはなく、身体がデータに変換され消えていった。
俺は泣き叫ぶことしか出来なかった。
目を覚ますと見慣れた自室の天井が目に入った。
昨日溜まっていた仕事を終わらせてフラフラになりながらベットに沈むように寝ていたことを思い出し、ベットから起き上がった。
時間は9時前、大分寝ていたようだ。
俺は寝間着から普段着に着替え、下のキッチンに向かった。
「あ、安藤さん!おはようございます」
「やっとおきた!ボクお腹すいたよぉ」
「やっとおきたのかい?あんなに仕事ためとくからだよ」
そこには朝ご飯の支度をしているリリカとギルモンとディテイモンがいた。
「お前ら…飯まだ食ってなかったのか?」
「はい、ご飯はみんなで食べたいってギルモンが」
「みんなで食べるご飯は美味しいから!」
「今日の朝ご飯はパンケーキとベーコンエッグだよ、席について安藤」
お皿には出来立てのふわふわとした甘さ控えめのパンケーキにカリカリと焼けたベーコンが二枚、きれいに焼けた目玉焼きが乗っており、机の真ん中にはサラダととりわけ皿があった。リリカとディテイモンがパンケーキを運び、ギルモンがせっせととりわけ皿にサラダをつぎわけて朝食の準備が完了した。
「それじゃあ食べよっか。いただきます」
「「いただきます!」」
「…いただきます」
4人で囲む食卓。出来立ての朝ご飯を食べる自分達。
ご飯が美味しい、今日はどうする、仕事の内容、お昼ご飯の話。思い思いに食べて喋る。暖かく平和な時間。
ああ、どうかずっとこのまま、平和なときが続くと良いな。
そう思ってしまう。
それは雪降り積もる冬休みの出来事だった。
この俺アズマとパートナーデジモンのバンチョーレオモンとダークドラモンは実家のコタツでぬくぬくとしていた。
あ、ちなみに二人はモモコ博士開発の『ヒューマンプログラム』で人間の姿になっている。
「うぅ…寒すぎだろ…」
「今年一番の寒波ってニュースで言ってたぜ」
「まじかよ‥。あ、みかんなくなった」
「ミカンなら台所にある段ボールに入ってるぜ」
「えー‥出たくない」
「お前な…(汗)」
「おいバンチョーさんよ、コタツで丸くなってないでみかん取ってこいよ」
「なんで俺が‥」
コタツで寝てたバンチョーレオモンがのそのそと起き上がった。因みにこたつから出る気配はない。
「おめーが一番近いからだろ早くいけ」
「嫌に決まってるだろ、そもそもお前は食い過ぎなんだ。少しは控えろ」
「アア゛?別にいいだろ好きなもん食ったってよ!」
「見ていろアズマ、今にこいつはミカンの食い過ぎでミカン型の『オレンジドラモン』に進化するぞ」
「ンダとテメェ!表出ろや!!!ガキ大将がよ!!」
「いいだろう、この間の決着つけてやろう!」
そうして言い合いながら外に出た二人。
を、出た瞬間扉の鍵を閉めて二人を締め出した俺。
少ししたあと扉を叩く音が聞こえるが無視する
こたつの上にみかんを補充し、今晩の鍋を用意する。
数分後、庭へとつながる窓越しに二人で震えながら「い、入れて…」ととてつもなく小さな声でいうので窓を開けた。
「もう喧嘩はしないか?」
「「しません」」ガクブルガクブル…
反省はしてるようなので中に入れて、3人でこたつに入りながらあったかい鍋を食べた。
数日後…
〜喰魔カフェ〜
アズマ「ってことがあって、翌日からみかんはこたつの近くに置くことにしたんだよな」
ミコト「あんたってたまに容赦ないわよね」