土砂降りの雨
生温い風が私の思考を溶かしていく
濡れた髪が肌に張り付いて鬱陶しい
早く帰らねば
ここではないどこかへ
自分を知る人が一人もいない
遠いところに行き着いた時
もうなくしてしまった
当たり前が恋しくなる
でももうきっと手遅れなのだろう
独りぼっちになってはじめて気付いた
今まで何気なく過ごしていた日常は
私という存在を形作るなのに
なくてはならない大切な物なんだって
こんなからっぽな自分のことを
誰も覚えていないのだろう
君と最後に会った日のことを
私は1日たりとも忘れられずにいる
君が私の前に現れたことによって
私はじめて屈辱というものを味わった
君が現れるまで私はつねに1番だった
テストの点数でも足の速さでも
私に勝てる子なんて一人も居なかった
なのに君は私を易々と追い抜いていった
私のことなんて眼中にないみたいに
私じゃ君の背中を捉えることすらできなかった
私は自分がいかにちっぽけな存在であるのか思い知った
けれど君はある日突然居なくなった
周りに何も言わずに遠くへ引っ越してしまったらしい
まるで君なんてはなから存在しなかったかのように
私の非日常は終わりを迎えた
君はきっと私のことを覚えてないのだろう
それでも私は最後に会った君の姿をずっと
忘れることなんてできないのだろう
この胸に空いた穴は一生塞がらない
毎日毎日お世話をしていたのに
あなたはどんどんさの鮮やかさを失って
最後には枯れてしまった
遥かに短く儚い命
それでもあなたはキレイだった
私もいつかはあなたのように枯れてしまうのだろう
最期はあなたみたいに美しく散れたらいいな
僕は見てしまった
1年後の今日の日に君が死んでしまう未来を
脂汗が額に浮かびぜぇぜぇとした荒れた呼吸を落ち着かせながら今見たことを思い返した
僕は確かに見たのだ
横断歩道の中に立つ君と伸ばされた手を
君の目は確かに僕を捉えていた
その手は僕に届かないまま宙に取り残されていた
今までこんな夢を見ることなんて一度だってなかった
僕に未来を見ることができるなんて特別な力などなかった筈だ
これは僕の妄想なのだろうか
それでもあんなリアルな感覚がただの夢であるとは考えられない
頭の中にこびりついて離れないひどくおぞましい光景
視界は赤に染まる
バラバラになっていく君の身体
仮にもしこれが本当にこれから起きることだったとして
僕には一体何ができるんだろう
これから君と会ってどんな顔をすればいいんだろう
身体をうまく動かせないままでいると
ふと君の泣き笑顔が頭に浮かんだ
僕には耐えられないのだろう
君が僕の前からいなくなることに
君のいない世界を生きることに
君がいなければ僕に明日はない
僕は白い壁で囲まれたこの殺風景な空間に独り