【愛があれば何でもできる?】
白い煙がメガネを曇らせる。
肺を満たす煙は、さらに身体を重くした。
助手席に座っているはずの彼女は、今は後ろに居る。
深く思考に耽っていれば、周囲の景色は徐々に暗くなる。
自分の手はハンドルを握りしめすぎていたのか、電灯すらない暗闇でも朱く見えた。
私は静かに後部座席のドアを開けた。
そこには愛する彼女が目を閉じて寝ている。
彼女の身体を抱き起こし、座席に座らせた。
そして手元のスマホで明るさを確保し、彼女を見る。
目元が濡れていることに気づき、起こさないように拭った。
既に息絶えている彼女の目は開かれることは無い。
私がこれからすることを彼女が見ることは無いのだ。
彼女の懺悔を聴いた時に、私は決断していただろう。
さて、日が昇る前にやらなければ。
愛する彼女を、誰にも見つからないところに。
車に乗り、ハンドルを握ろうとするが、手が震えてしまう。
後ろを振り返り、彼女を見た。
前を向いた時には、私は痛くなるほどにハンドルを握りしめていた。
【初恋の日】
あぁ…私は彼に“恋”というものをしているんだ。
それを理解したのは、現代文の授業中に先生の雑談を遮るようにとある小説の一文を黙読したときだった。
『中心の色が変わった』
その文章を読んだ私は、ふと自分がよく見る色を思い浮かべたのだ。
制服の紺色、黒板の黒とは言えない緑色、空の青や雲の白を思い浮かべる中で、自然と目はあの藍色に魅入られた。
藍色のシャーペンを動かす彼のすぐ側には、藍色のペンケース、机には藍色のキャラクターのチャームを付けたスクールバッグがかかっている。
どれくらい見ていたのかはわからなかった。けれど、頭に響くチャイムが時間切れを告げる。
私はこの授業中ずっと見ていたのだろう。
板書を写すために急いで黒板を見ると、そこには黄色い文字で、『それが初恋というものなのです』と書いてあった。
【こんな夢を見た】
私たちしかいない部屋で殺人が起きた。
殺されたのは誰かわからない。でも殺したのは私なの。
だって私の手にはわたしの血がこびり付いてるから。
私は、何故殺したのでしょう?
私は、誰を殺したのでしょう?
私は、わたしは……?
わたしは、その部屋を出て目を覚ましたの。
『言葉はいらない、ただ…
…抱きしめてほしかったんだ。』
そうして彼は旅立った。
あの桜の舞う中庭で、あの人はただ、
笑みを浮かべていた。
整えたものを全て出し切り、ひとつの場所に集うことをキッカケに意識する。
皆がそれぞれ思い思いに過ごした年数以上をこれから生きることになるだろう。
【20歳】という大きな節目を超えた青年らは、正直無敵だと思う。