会社から出て、空を見上げるとチラチラ細かい雪が風に乗って空を舞っていた。
「あ、雪だ……」
雪は好きだ。
雪が降ると世界が静寂に包まれる。
辺りの喧騒が、音が、全部雪に吸い込まれて消える。
まるで世界にひとりぼっちのような感覚がどこか心地良い。
疲労でぼんやりとしていた気分が少し上がる。
珍しいからといって、雪を見ただけでテンションが上がるとか、なんて単純なんだろうと苦笑する。
ヒュウッと風が吹き抜けて思わず顔をマフラーに埋めた。
雪は好きだ。
ただ、身体の芯まで凍えるようなこの冷たい風は頂けないな!と、足早に帰路を急ぐのだった。
#木枯らし
I miss the world today
この世界は 今日も君無しで周っている
I'm still hating you
指きりげんまん嘘憑いた 君に針飲まそう
#この世界は
見るなら都合の良い夢を
どうせ都合の悪い現実からは目を背けられないんだから
夢くらいは都合良く見させてくれてもいいじゃないか
そう思うのに見る夢はどれもこれも都合の悪い夢ばかり
なんて現実的で、面白味のない夢なんだろう
ずっとそう思っていた
そんなつまらない夢ばかり繰り返していた矢先、
念願叶って都合の良い夢を見た
それは全部許される夢だった
心の奥底に鍵をかけた後悔を
全て許される夢だった
文字通り飛び起きる
とても都合が良かった
あまりにも都合が良すぎた
心臓がギリギリと締め付けられ
呼吸を整えようにも息が苦しい
寝る前と何も変わっていない現実に安堵さえする
「 」
あぁ、そんなはずないだろ
だって、君は、そんなこと言わない
まるで救いのようであり、果てしない罰だと思った
醒めてしまう都合の良い夢
それは何よりの悪夢だったのだ
#夢を見てたい
「ねぇ、何願ったの?」
「……内緒」
「ずるい。じゃあ私も内緒!」
そんなやりとりをしたあの日が、
ずっとずっと遠い過去のように思えた。
見上げれば星空は変わらずそこにある。
ただ静かに瞬いて変わらずそこにある。
なのに、傍に寄り添う温かさだけがもう無い。
“これからも、ずっと一緒にいられますように”
「……うそつき」
星が願いを叶えてくれるだなんて、
一体誰が言ったんだろうか。
流れ星はささやかな願いですら
叶えてくれやしないと知ってしまった。
#君と一緒に S7 幕間 side.S
これは秘密なんだけどさ
夜は静かで穏やかで
隣で眠る君の体温が心地良いこと
ふかふかの布団、暖かい毛布、微睡む時間
朝は明るく清々しく
まだ少し眠そうな君の顔が良く見えること
少し跳ねた毛先、小さな欠伸、カーテンの隙間から差し込む柔らかな光
朝も、夜も、こんなに素敵なものなんだよね
明け方にふと目が覚めた
どうやら君はまだ眠っているようだ
朝も、夜も、もうこなくていいと
そう言って泣いていた君の寝顔をしばらくの間見つめる
夜が明ける美しさを
おはようが言える喜びを
ささやかな幸せを
君にも感じてもらえたらいいなと思いながら
もう一度目を閉じて二度寝を決め込む
顔を出した日の光が二人をゆっくりと照らし始めていた
#日の出