『記憶の海』

断片的に覚えていること
ほんのり忘れかけていたこと
夕陽のなかへ旅立ったはずのこと



砂浜に
打ち上げられた貝殻を手にした時の
懐かしさ

荒波に揉まれる苦しさ

あなたに辿り着かないまでも
静かに満ちていく　月の光と潮騒



すべてが記憶の海になる
どこにもないけど　いつでも会える

記憶の海の　波打ち際で
打ち上げられた貝を片手に

カフェオレが　真横に倒れて
甘ったるい島がいくつかできました

赤鉛筆　で　学校を
青インクで　塾を
危険地帯に指定


-新しい地図-

パッと見でloveとlikeは似てるけど

白と臼ほどそっくりじゃない

-好きだよ-

桜


朧げな春

　思い出をつくるには　大人になり過ぎて

　足を遠くに伸ばすんだ



桜貝を　拾って

　君は　ふいに顔をあげる


砂浜の　向こうから

　吹いてくる風が　小さな花びらを散らすから


朧げな春

　街が遠くに見えるんだ

悲しみをわざとふたつに割ってから
大きい方をさらっていった

もしもあの夜　隙間風が吹いてこなければ
今も　手を繋げたの？


-君と-