桜


朧げな春

　思い出をつくるには　大人になり過ぎて

　足を遠くに伸ばすんだ



桜貝を　拾って

　君は　ふいに顔をあげる


砂浜の　向こうから

　吹いてくる風が　小さな花びらを散らすから


朧げな春

　街が遠くに見えるんだ

悲しみをわざとふたつに割ってから
大きい方をさらっていった

もしもあの夜　隙間風が吹いてこなければ
今も　手を繋げたの？


-君と-

君のいない朝が来て　言葉の出ない夜が来る
　さよならさよなら

みつばちが引っ越し先を探してる
　家族みんなで内見してる


今日だけは大人のふりをやめようと
足元に咲く綿毛を飛ばす


-空に向かって-

新しい人が今年も来ない
簡易デスクにひとひらの花びら



-はじめまして-

手を振っても届かない　憧れでは
辛さが増していくだけだから



-またね！-