星粉

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6/10/2025, 2:32:32 PM

 仕事でミスをした。

 友達と喧嘩した。

 排水溝に小銭を落とした。

 何もないところでこけた。

 テストの点が悪かった。

 低気圧で頭が痛かった。

 それでも、見上げた空は美しかった。

3/10/2025, 4:58:04 PM

 「願いが一つ叶うなら?」

 いつも通りの部活帰りの道を、いつも通りみかと2人で駄弁りながら歩いていた。
 ふと、雑談の一つの種として、よくある、そんな質問を隣を歩くみかに投げかけてみた。
 「ベタだね〜」と言いながら真剣に考えるみかの横顔が綺麗で、長い綺麗な揺れるシルクの糸の隙間から見えるはずの黒色の水晶は橙色に染まって琥珀となっていた。
 うーん、と眉間に皺を寄せていたみかは急に悪戯っ子のような笑みを浮かべてこちらを向いた。表情がコロコロと変わって見ていて飽きない。
 「決めた!!」
 「おっ何にする?」
 「私はね〜、大好きなイチゴをお腹いっぱい食べたい!!」
 「ええ…」
 そのあまりに可愛らしく、高校生らしくない無邪気な答えに私はつい困惑の声を漏らした。それを不満に思ったのかみかは「だってさ〜、」と口を尖らせながら続ける。

 「別にズルして夢叶えたくないし、世界平和とか願うほど聖人じゃないし。こういうので大成功してもそのうちどっかで破滅するのがドラマとかアニメのお約束じゃん?だったら一回のド幸せ貰った方がよくない?」

 「そっかぁ。」

 私はみかと仲がいいが、割と考え方は違ったりする。から、みかの答えを聞いて私はまさに目から鱗、というやつだった。

 「何その反応、バカだな〜って思った!?」
 「思ってない思ってない!…ちょっとしか」
 「思ってんじゃん!!じゃあゆみは何を願うの?」

 笑いながら、少し不服そうに、相変わらず琥珀を宿したその瞳で楽しげにこちらを見てきた。
 その仕草が、表情が、声色が、考え方が、行動が。その一つ一つが私の心を掴む。
 私は──、

 「みかみたいになりたいかな。」

 “誰か”になりたい、なんて考えている時点で君になんてなれないんだろうけど。

 「やっぱバカにしてるでしょ!!」
 「してないってば〜!」

 2人笑いながらいつもの道をゆっくりと歩いていく。

 みかの琥珀は、知らず知らずのうちに菫青石へと変わっていた。

 ああ、綺麗だな。