『夢が醒める前に』
もしもこれが夢だというのならどうか醒めないで
今があまりにも幸せで
あまりにも美しい景色が目の前にあるから
時々これが現実だと言じられなくなる
もしもこれが本当に夢で醒めてしまうというのなら
醒める前に手放してもいいと思えるように
どうか私を絶望の淵に突き落として
『泣かないよ』
卒業式の日、泣かないよと私は言った
卒業したってまた会えるし
でも君は私が絶対泣くと言う
なんでだよと軽口を叩き合いながらいつものように学校に向かう
泣かないように卒業というものをあまり深く考えないようにして卒業式を乗り切った
ほら、泣かなかったでしょ?
君はまだ終わってないよと笑う
教室に戻ってからクラスで思い出の動画を見るのがこの学校の風習だ
乗り切れると思ってた
また会えるから
動画を見てる時この当たり前だった日常がもう戻ってこないのだと思ったら止められなかった
君は何も言わず私を抱きしめてくれた
ああ、君にはわかっていたのか
私にとってこの日常が失いたくない大切な日々だったことを
私が思い出というものに弱くて泣いてしまうことを
君と出会って、笑って、泣いてたくさんの思い出をつくることができて本当に幸せだった
ありがとう
そしてこれからも…
『怖がり』
君は僕が出会った人の中でも特に怖がりだったと思う
人と話すこと、お化け屋敷、夜の海、今の日常が変わってしまうこと
多くのことに対していつも怖い怖いと言っていた
でも君は怖いと震えながらも一歩踏み出す勇気を持っていたんだ
そんな君に惹かれていた
もし君がもっと怖がりだったら君の隣にいられるのは僕だったかな
それとも君のことを好きになれていなかったかな
『星が溢れる』
夜の大海原、甲板に出てみると黒いカーテンを引いたのかと錯覚するほどに海と空は真っ黒に染まっていた
その姿には恐怖すら覚えるほどに
そんな中空を見上げるとそこには真っ暗な海を照らす輝かしい月と溢れんばかりの星が瞬いていた
先の見えない暗闇に希望の光を差すように
不安な夜が希望で溢れるように
『安らかな瞳』
君の瞳には何が映っているのだろう
私にはわからない
どれだけの時を共に過ごしても、私とは違う人生を歩んでいる
私とは違う価値観を持っている
今まで私の知らない多くのものを見てきたその瞳で何を見ている
どうしてそんなにも安らかに笑うのだ