カンカン、カンカン、踏切が鳴っている。
僕の車椅子はレールに引っかかって、動きが取れない。
僕は歩けない。
非常停止ボタンは見えているけど、手は届かないし、そこまで辿り着けない。
踏切のバーがゆっくりと降りてきて僕を閉じ込める。
田舎の小さな踏切なので、周囲には誰もいない。
レール越しに列車が近づいてくる気配がする。
今、僕にできることは。
目を瞑って、現実を受け入れることだ。
さよなら、今日。そして、明日。
バイバイ、大切な家族と友人達。
【今日にさよなら】
わたしには友達がいなかった。人付き合いを禁じられていた。その代わり、ぬいぐるみを沢山与えられた。養母は猫をいっぱい飼っていた(犬もいた)。
ある時ぬいぐるみを幾つか捨てなさいと母に言われて、嫌がって泣いた。ぬいぐるみに名前やパーソナリティを設定してお友達認定していたし、創作物にも登場させていた。
ぼろぼろの一体を無理に捨てることに同意させられて、写真に残した。でもわたしは写真のほうを捨て、ぬいぐるみは回収して屋根裏に隠したのだった。
【お気に入り】
わたしは自己肯定感が低い。
誰よりもこの世に要らない存在だと思っている。
でも時々立ち止まる。
誰よりも、とは思い上がっていないだろうか、と。
自己否定する時でさえ、誰かと比べてしまう。
まあ、親に直接死ねと叫ばれた体験上、生まれてきたのは間違いなのかなと思う。
育ってしまって、まだ生きていて、ごめんなさい。
【誰よりも】
お題を見た瞬間、EPOの「私について」という歌が脳裏に流れた。
未来のわたしに手紙を書いたら 宛名が違うと返事が来たから
この部分がそっくり答えになっているように思う。
十年後のわたしなんて、生きているかどうかもわからない。そんな確たる保証もないのに、手紙が来るはずがない。
ひとつ言えるのは、夏がもう人間の耐えられる限界気温を超えているであろうことかな。
【10年後の私から届いた手紙】
バレンタインは、約二百年の歴史を持ち、世界中で愛されている「スコッチの王道」とも評されるブレンデッド・スコッチウヰスキーの銘柄である。
あ、それ、バランタインだね。頭文字もBだね。
コホン。
西暦二百六十九年二月十四日に処刑された、司祭ウァレンティヌスが聖ヴァレンタインの正体である。当時のローマ皇帝クラウディウス二世は、「若者が戦争へ行きたがらないのは、故郷に残る家族や恋人と離れたくないからだ」として結婚を禁じていたが、密かに結婚式を執り行っていたのがこの聖人だ。以降彼は愛の守護聖人となった。
如何に著者に縁がない日かお分かり頂けると思う。
【バレンタイン】