わたしには友達がいなかった。人付き合いを禁じられていた。その代わり、ぬいぐるみを沢山与えられた。養母は猫をいっぱい飼っていた(犬もいた)。
ある時ぬいぐるみを幾つか捨てなさいと母に言われて、嫌がって泣いた。ぬいぐるみに名前やパーソナリティを設定してお友達認定していたし、創作物にも登場させていた。
ぼろぼろの一体を無理に捨てることに同意させられて、写真に残した。でもわたしは写真のほうを捨て、ぬいぐるみは回収して屋根裏に隠したのだった。
【お気に入り】
わたしは自己肯定感が低い。
誰よりもこの世に要らない存在だと思っている。
でも時々立ち止まる。
誰よりも、とは思い上がっていないだろうか、と。
自己否定する時でさえ、誰かと比べてしまう。
まあ、親に直接死ねと叫ばれた体験上、生まれてきたのは間違いなのかなと思う。
育ってしまって、まだ生きていて、ごめんなさい。
【誰よりも】
お題を見た瞬間、EPOの「私について」という歌が脳裏に流れた。
未来のわたしに手紙を書いたら 宛名が違うと返事が来たから
この部分がそっくり答えになっているように思う。
十年後のわたしなんて、生きているかどうかもわからない。そんな確たる保証もないのに、手紙が来るはずがない。
ひとつ言えるのは、夏がもう人間の耐えられる限界気温を超えているであろうことかな。
【10年後の私から届いた手紙】
バレンタインは、約二百年の歴史を持ち、世界中で愛されている「スコッチの王道」とも評されるブレンデッド・スコッチウヰスキーの銘柄である。
あ、それ、バランタインだね。頭文字もBだね。
コホン。
西暦二百六十九年二月十四日に処刑された、司祭ウァレンティヌスが聖ヴァレンタインの正体である。当時のローマ皇帝クラウディウス二世は、「若者が戦争へ行きたがらないのは、故郷に残る家族や恋人と離れたくないからだ」として結婚を禁じていたが、密かに結婚式を執り行っていたのがこの聖人だ。以降彼は愛の守護聖人となった。
如何に著者に縁がない日かお分かり頂けると思う。
【バレンタイン】
学校の最寄り駅で待ち合わせをしていた。
相手は同級で仲良くしてくれる人。
待てど暮らせど、いつまでも来ない。
約束の時間をだいぶ過ぎて、当時は携帯以前だったので、公衆電話から彼女の家に電話した。
「ごめん、今起きた」
とても眠そうな声が返ってきた。
さて、彼女の家からこの駅までおよそ半時間。この分だと支度もまだしていなさそうだ、と考え、わたしは本を広げてのんびり待つことにした。
【待ってて】