風に乗って
風は多くのものを運ぶ。
凧、風船、匂い、温度。
具体例を挙げればきっと無限にあるのだろう。
流れに身を任せ、風が吹く限りどこまでも飛んでいける。
人は飛ぶことができないから、どこにでも飛んでいけるものたちが羨ましいと私は思う。
でもね、君が風に乗ってどこかに飛んでいくことだけは許すことができないんだ。
花粉。君のことだよ。
題:友情
「オレが転校してもずっと友達でいてくれよ。約束だからな!」
「友情証明書を発行してもらおうよ!」
担任の先生に無理を言って、友情証明書なるものを作ってもらった。
数日後、〇〇君は僕の知らないどこかへ引越した。
とはいえ、今はSNSが普及している。僕と〇〇君は大人になってからSNSを通じて再会した。仲はもちろん良好だ。
ただしその過程で僕たちの関係性は"友情"から"愛情"に変わった。
「ずっと友達でいる約束破っちゃったな」
「また新しい証明書を作ってもらえばいいだけさ」
数年後、僕たちは知ってるけど行ったことのないところへ引越した。
今度は正式な書類を作るために。
題:花咲いて
春に覚えた不安を忘れて
夏に日差しを沢山浴びて
秋に成長を実感して
冬に努力を見せつけたなら
次の春、確実に花は咲く
だから受験生、今頑張って
応援しています
題:今一番欲しいもの
どうか私の話を聞いてくれないだろうか。
私の人生はとても恵まれていて、金には困っていないし名声もある。
早い話、欲しいものはもう全部手に入れていて、今新しく欲しいものなんてないんだ。
望むなら、私が持っているものならば全て君に捧げよう。
だからここにたどり着いたあなたよ。
この声明は今日が終われば消えてしまう。
どうか私の存在を忘れないでほしい。
何もいらないから、私の存在を奪わないでくれ……
題:私の名前
私の名前が世の中を一斉に風靡している。
なんと嬉しいことだ。
自分の人生でこんな事があるとは……そう思いたかった。
私の名前が全国に轟いた理由は名誉ある授賞のためでも、功績のためでもない。
昨日起きた殺人事件の指名手配としてニュースで報道されたためだった。
違う!私じゃない!
だってあの時私は酒に酔ってて、全てがヤケクソで、
だから絡んできたチンピラがウザくて、それでカッとなって一発殴って……
それから、どうやって帰ってきたんだっけ?
慌ててスマホのロックを解除すると、待ち受け画面にいる私は誰かもわからない死体の側でピースをしながら笑っていた。