最後に会った日に、彼女は「私のことはもう何も考えなくて大丈夫だから」と言った。
僕は頷いた。
僕の心は、もう彼女から離れてしまっているというのに、その言葉を聞いてから、むしろ彼女のことが頭から離れなくなった。
これはシロクマ効果と呼ばれる現象なのだろうか。
「君と最後に会った日」
月の光を浴び白い花を咲かせる月見草。
月見草は夜空の月に恋をする。
優しく月に照らされ月見草は白い花弁の頬を桃色に染める。
はにかむ可憐な少女のように。
月見草は白から淡いピンク色へと変化して、夜が明ける頃しおれてしまう花。
はかない恋心は一夜限りの美しく繊細な夢。
「繊細な花」
不思議な小人たちは、小さな背中で世界を手なずける。
この小人たちの存在は人間には気付かれないけどイケメン猫には見えている。
彼らは周りに合わせて自動的に活躍するんだ。
国々が揉めたり、経済が不安定だったり、大多数の人が考えることを放棄したり、自然が乱れたりするのも小人の仕業だよ。
これは小人たちが意地悪なわけではない。
今はただそういう流れなんだ。不安定な時期なんだ。
一年後は小人がどんな動きをするのかはわからない。
心配なことは、時々大暴れする小人が人々の心にも入り込んじゃうこと。
そうならないようにするには、自分の好きなことを大切にすることが大切なんだ。
「1年後」
東堂君のお父さんが北米支社の駐在員としてお仕事をすることになって、東堂君は就学前まで家族でシアトルに住んでたんだ。
そこでの東堂君のシッターさんが白人の独身女性だったんだよ。
東堂君は子供の頃は、シッターさんのことを不美人だと思ってたの。
というのも、下から彼女を見上げると鼻の穴の形が日本人より長くてなんともビックリしちゃったんだ。
でも、高校生になって白人の美しく高い鼻の穴って長いって知ったんだって。
そしたら、あの頃のシッターさんも美人だったのかなって思っちゃうんだ。
でもそんなことよりシッターさんがめっちゃ優しかったことを懐かしく思い出すみたいだね。
「子供の頃は」
むかし、イケメン猫は天使として、前だけを見つめ進むことだけが美徳であるという教えに添って働いていた。それについて疑問を挟んだりはしていけなかった。それが無垢な心と言われていたんだ。
だけどこの世界にやって来てからは、前だけでなく横や後ろも大切にすることを学んだ。
そうしなければライオンの尻尾を踏んでしまうかもしれないからね。
より良い方向を自分で選ぶことを日常的に何気に行なっているんだ。
音楽を聴きながら過去を振り返り、お食事をしながら未来を見据えたりするのさ。
「日常」