からっぽになった子ども部屋

860円で捨てられる思い出の媒体たち

それでも良いと思う大きな殻の中に

ひとりだけこどもが取り残されている

写真にも記憶にも残らなかった音の中で

もう二度と会えない純声たち



テーマ「言葉にならないもの」

傷つくのならやめて良い

苦しいのならやめて良い

やさしいあなたが泣くような

やさしさなんて　やめて良い

それでもきっと無駄じゃない
いつか巡って戻ってくるよ

お空が　海が　青いのは

優しい誰かのためだから



テーマ「やさしさなんて」

細い細い糸のような針をたぐりよせて

金色の雲と、銀の葉は風に乗って

真白のうさぎ

ノーティカルスター

死んだ詩人のアイロニー




テーマ「心の羅針盤」

誰にも言えぬ悲しみに

宛名を書かずにおりました

誰にも言えぬ悲しみは

今は朽ち果て胸の底

さながら海成層の骨

どうせさらわば化石さえ

絶やしてくれたら良いものを




テーマ「波にさらわれた手紙」

暗んだ夜に月ひとつ

波も立てない川の土手

音も鳴らない石の果て

ホタルは運ぶたまゆらの

またたく月の子　光の子




テーマ「8月、君に会いたい」