9/2/2025, 6:53:53 AM
黒いマントの人が言う
×××を届けに来ましたよと
白い甲板の上に立っている
後ろには灯台が、錆びた匂いを放っている
私のものではありません
では預かってくれませんか
いつまで
春まで
冬まででは、だめですか
いいえ、春まで
首を振る
黒いマントの人は海に溶ける
割れた試験管と黒曜石
テーマ「夏の忘れものを探しに」
8/28/2025, 1:40:37 PM
校庭に生える夏草は
あの日と同じみどりいろ
私はカケラを教室に
置いて忘れてきたみたい
卒業証書を貰ったけれど
名札をつけなくなったけど
青春なんてなかったけれど
忘れられない夏の色
テーマ「夏草」
8/27/2025, 1:01:13 AM
田舎だったから
道路も お庭も 素足で走った
雪は 草は コンクリートは
冷たかったり熱かったりした
母さんは怒っていたけど
怒りながらも 見守っていた
眉毛をきゅっと下げてあきれて
私の素足を拭ってくれた
テーマ「素足のままで」
8/23/2025, 1:39:05 PM
蒼天 地球は現実を突きつける
こんなにも小さい体が私の全てであることを
雷鳴 前頭前野は孤独を悟る
屋根と壁と床に守られている私は
それでも大地を母と慕っている
いつか細かい粒子になって大気に溶けるその日まで
テーマ「遠雷」
8/19/2025, 12:28:30 AM
夏の夕暮れ 電柱の向こう側
軽やかな子供たちの足音と笑い声
私は知っている
夏の日差しの冷たいことを
夏の終わり 電柱の向こう側で
蝶々たちが帰っていくことを
テーマ「足音」