暗んだ夜に月ひとつ

波も立てない川の土手

音も鳴らない石の果て

ホタルは運ぶたまゆらの

またたく月の子　光の子




テーマ「8月、君に会いたい」

しゃぼんが砕けて　焚べたスパーク

誰かが植えたゼラニウム

10000年前にも咲いてた花の匂いを

彗星だけが憶えている





テーマ「タイミング」

マッチのほのお

夕立のくも

枯れ草色のみずたまり
河川敷にはただひとり

傘にのこった水滴が

隣の宇宙とこだました


テーマ「オアシス」

流れ星の軌跡のように

砂場に描いた名前のように

今はもう目に見えぬもの

それでも確かにあったもの

言えずに癒えずに潰した気持ちを

引きずってできた透明の傷跡



テーマ「涙の跡」

先生は思考をなさいます

多元宇宙の中の、小さな水と熱からの叡智

もしも過去へと行けるなら

太陽の産声を聞きましょう

母もかつては赤ん坊

撫でてやらねばならぬでしょう



テーマ「もしも過去へと行けるなら」