雪
ひらひらと雪が降り始める。
みんなで行ったスキー旅行をずっと覚えている。
あの時もこんな風に少しばかり雪が降っていた。まあ、あのときの雪は人工だったのだけれど。それでも、手袋に張り付いた結晶を見て、これは人工だ、いや自然のものだなどと言い争ったものだ。
あなたはスキーが上手かった。
まだ小さかった私たちは、あなたに教えられてだんだん上達していった。初めは曲がることすらできず、平たい場所では引っ張ってもらい、転んでは帽子や板を自分の所まで持ってきてもらったものだ。
それが今では中・上級コースを難なく滑ることができるようになったのだから。
あなたの滑りは美しかった。無駄のない身のこなし…はしていなかったな。景気づけにストックをちょいちょい無駄に動かして軽快に滑る人だった。
私はその癖は受け継がなかったけれど、今そこにいる彼はよくしているよ。景気づけ。
あなたが豪快に曲がる時にぶわっと舞い上がる雪が好きで、自分でもわざとらしく雪が多いところで曲がったりなどしてみたものだ。
いつの間にか、あなたは来ることができなくなった。
いやー、最後がいつかってわからないものだね。
でも、きっとまた行くよ。
スキーウェアに引っ付いた雪の美しさも、風に乗って吹き付ける雪の冷たさも、全部あなたに教えてもらった。
また、みんなで。全員とはいかなくても。
今度は私が教える番だ。
君と一緒に
ねえ、覚えてる?
去年の夏。8月…10日、だったっけ?
一緒に見た花火、綺麗だったよね。
最近はもうすっかり寒くなったねえ。
お店のイベントコーナーも、ハロウィンが終わったと思ったら、もうクリスマスの飾りだよ。まったく現金なんだから。
クリスマスといえば、去年行ったあそこ、今年も行きたいね。イルミネーション、綺麗だったなあ。
今年こそ、クリスマスには手作りケーキちゃんと成功させてやるんだから。去年ケーキ作り失敗して行ったとこのケーキ屋さん、超当たりで美味しかったけどね。やっぱり、1回くらいは自分の手でぎゃふんと言わせてやりたいもの。あたしが作ったケーキ、そもそもスポンジ膨らまなかったからなあ。どうやったら上手く膨らむんだろう。君はスイーツ作り上手かったよね。
語りかけても答えない。
そんな姿が見たい訳じゃなかったんだけどな。
ずーっと一緒にいられたら、それこそ結婚とかできたら、私の人生はとーっても幸せだったんだけどな。
身寄りのない君に、幸せってやつを、嫌ってほど味わせるつもりだったんだけどな。
ずいぶん、小さくなったねえ。
こんな小さな壺に収まっちゃって。
あーあ。
気持ちの整理はできないけど、
その代わり約束。
来年の夏。
最速でかえってくること。
…新幹線みたいな形、きゅうりくり抜いて作っとくから。
そんでまた一緒に花火でも、見よ。
いい?忘れないでよ?