脳裏に浮かぶのは
優しいあの子の笑顔
脳裏に浮かぶのは
賢いあの子の読んでる分厚い本
脳裏に浮かぶのは
綺麗なあの子の青い瞳
脳裏に浮かぶのは
歪んだあの子の大好きな親友
脳裏に浮かぶのは
不幸なあの子の頭から流れる血
脳裏に浮かぶのは
可哀想なあの子の青白い寝顔
脳裏に浮かぶのは
大好きなあの子の小さくて可愛い姿
目の前にいるのは
涙をこぼして僕にすがりつく、あの子の親友
目の前にいるのは
宙に浮いて親友を慰めるあの子
目の前にいるのは
彼女を守ろうと僕を睨みつけるあの子
「あの子に近づくな」
可愛らしい、鈴を転がしたような声
「見つけた」
脳裏に浮かぶのは
あの子とふたりきりの、楽しい楽しい僕らの毎日。
馴れ合うつもりなんて、なかった。
こんなの目的のためには必要ない、意味のないこと。
そんなことに時間を割いている暇など自分には無い。
だから関わるのは最低限にするつもりだったのに。
いつの間にか、あの太陽のような、向日葵のような、暗闇を生きる自分には眩しくて仕方ないお前に、気づけば随分と情が湧いてしまって。
離れるのが、つらいと思ってしまった。
違う。
違う。
最初から、自分は、お前らを騙すつもりで。
目的のためには、湧いた情はいの一番に捨てきらなければならない。
それなのに。
いつから、“意味のないこと”を大事にするようになってしまったのか。
それがあいつのせいなら、おれはあいつを恨むだろう。
「今は意味があると思えないことにだって、大事なものはあるんだって!」
そう教えたのは、お前だよな。
なぁ、そうだろ?
あなたとわたしでは、いきるせかいがちがうのです。
こちらにきちゃだめ、あなたにはこんなくらいばしょにきてほしくないから。
わたしにちかづいてはだめ、あなたもまっかによごれちゃうから。
わたしにはなしかけてはだめ、だってあなたのとなりがいごこちよすぎて、むこうのせかいにもどれなくなっちゃうから。
わたしのてをとってはだめ、むこうでのいきかたしかしらないの、ここにはいたくないの、いられないの
わたしにわらいかけないで、にどとここにもどることはないのに、また、あなたのひだまりのようなえがおがほしくなってしまうから、
やめて、やめて、あってはならないはずなのに
わたしはあなたにひどいことをしたけれど、もしもあなたがわたしにまた、わらってくれるなら、
そのときは、こっちにきてもいい?