ひらり
満開の花が咲きほこる梅の木
赤、白、ピンク、色とりどりの梅の花を眺めながら散策を楽しんでいるとひらりと花弁が1枚 舞い落ちた
「儚いけど綺麗だな…」
目を細め、思わず呟いたら「私もそう思うわ」と柔らかい声が後ろから聞こえた
驚いて振り返ると柔和に笑う女性が立っていた
「えっと…」
どうしていいかわからなくて言葉に詰まっていると女性は「ごめんなさいね、思わず返事をしてしまったわ」と口元に片手を持ってきてふふふと笑った
「散策ですか?」
「えぇ、梅のいい香りがしたから誘われて」
「そうなんですね」と答え、女性の隣に並んで花を見上げる
その後は何の会話もなかったが、女性の隣は居心地がよかった
一輪の花
「好きです!
同じ気持ちなら受け取ってください!」
そう言って差し出された手には一輪の花が握られていた
その花は君と出会った時に私が「好きだ」と言った花だった
「ありがとう」
感謝の言葉を伝えてその花を受け取る
彼はほっとしたように1度 息を吐くと綻ぶ笑顔を見せてくれた
「これがお母さんとお父さんの馴れ初めよ」
「ふーん」
自分で聞いておいてもの凄くどうでもいいというような息子の返答に夫と苦笑いする
家族3人、いやもうすぐ5人になるこの家には1番 目につく所に花瓶を置いている
そこに生けてある花はもちろんあの花だ
魔法
保育園を卒園する時、将来 何になりたいかを発表した
『お花屋さん』
『ヒーロー』
『看護師さん』
『お医者さん』
次々と友達が発表して行き、最後 私の順番になった
私は台の上に立ち、大きく深呼吸をした
「私は魔法使いになりたいです」
いろんな人が拍手をしてくれたのが凄く嬉しかった
私は魔法使いの夢を叶えられるようにこれから頑張っていくと改めて思った
あなたは誰
ここ数日、同じ夢を見ている
その夢には必ず男の子が出てくる
毎回 男の子の顔は分からない
「あなたは誰…?」
男の子に聞いてみるが微笑んでる雰囲気はわかるが、名前はわからなかった
それが嫌だとかではなく、嬉しいと思う自分に男の子に好意を抱いてると解った
男の子の正体はわからないけど、彼といるこの時間は特別だ
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ひそかな想い
「兄ちゃん、兄ちゃん」
「どうした?」
私がててて、とかけ寄ると兄ちゃんは笑顔で迎えてくれる
あー、やっぱり好きだなぁとしみじみ思う
「わっ!」
わしゃわしゃ!っと髪をかき混ぜられた
それが兄ちゃんの照れ隠しだと知っているから余計に嬉しい
密かな想い人の兄ちゃん
いつかこの想いを伝えられたらいいな
手紙の行方
彼に宛てた手紙
それを直接 渡す勇気がなくて、彼の家のポストに投函した
その手紙の行方が気になって仕方がない
受け取ってくれたのか、破り捨てられたのか、燃やされたか…
でも、それを確認する術がない