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11/10/2024, 1:42:22 PM

「ススキ」という文字から、お月見しか思い浮かばなかったので、ちょいと辞書で調べるところからスタートしてみましょうかね。

ススキ=山野に群生するイネ科の多年草。秋、花茎の先に尾花と呼ばれる大きな花穂をつける。秋の七草の一つ。

春の七草は知っていたけど、秋の七草は知らなかったのでこちらも辞書で引いてみました。

秋の七草=秋に咲く代表的な七つの草花。ハギ・オバナ(ススキ)・クズ・ナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・キキョウ(または、アサガオ)

私の手持ちの辞書では、由来とかは載っていなかったので、さらにインターネットで由来を調べてみると──以下引用。

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秋の七草の由来 秋の七草は万葉集に収められている山上憶良の2首の歌が始まり

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) 
かき数(かぞ)ふれば 七種(ななくさ)の花」

「萩の花 尾花(おばな) 葛花(くずはな) 撫子の花 女郎花(おみなえし) 
また藤袴 朝貌(あさがお)の花」

1つ目の歌の意味は「秋の野に咲いている草花を指折り数えると7種類ある」
2つ目の歌は「それは萩の花、尾花、葛(くず)の花、撫子(なでしこ)の花、女郎花(おみなえし)、また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお)の花である」と7種類の草花を説明しています。
「朝貌」は「朝顔」のことで、諸説ありますが、現在では桔梗(ききょう)のことだと言われています。
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万葉集の歌が由来とは、秋の七草はとても風流ですね。
春の七草は、七草粥にして無病息災や健康長寿を願いますが、秋の七草は鑑賞や季節を感じて慈しむのが目的とのこと。

先人にうたわれた花を飾り、美を見出す。芸術の秋に相応しいなぁなんて、思ってしまいました。

花言葉とかも気になったので、こちらもインターネットで調べてみました。

萩=「思案」「内気」「柔軟な精神」
尾花=「心が通じる」「活力」「元気」
葛=「芯の強さ」「活力」「治療」「根気」
撫子=「純愛」「貞節」「無邪気」
女郎花=「美人」「はかない恋」「約束を守る」
    「親切」
藤袴=「ためらい」「やさしい思い出」
   「あの日を思い出す」
桔梗=「永遠の愛」「変わらぬ愛」「誠実」「気品」

(朝顔=「愛情」「結束」「あなたに絡みつく」
    「明日もさわやかに」)

心に芯があるけれど、控えめで、思慮深さも垣間見える言葉達。何だかとても素敵だなぁなんて思ってしまうのは、私だけでしょうか。

こういう調べ物をしていると、次から次へと調べたくなってしまいます。

一つをとことん突き詰めても、或いは、広い視野で
見ても、そこから無数の枝葉があることを知り、世界は豊かで広いのだなぁ、なんて思ってしまうのです。
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ススキ

秋の野の、尾花(をばな)が末(うれ)を、押しなべて、来(こ)しくもしるく、逢へる君かも
阿倍朝臣蟲麻呂

11/9/2024, 2:46:30 PM

最近SNSのTLを見ていると「おや?リンクしてる?」と思うことがある。

私にとってリンクとは、自身が思っていることや自分の置かれている状況などと似ていることを指すのだが──。
この「もしかして、リンクかな?」と少しでも思った瞬間、そこに書かれている単語や文字が、他よりも
大きくなって見える。
自身の調子が良い時なのかは分からないが、文字の周囲が光って見えたり、他の文字より浮いて見えたりすることもある。

見えているものが大きくなったり小さくなったりする現象に、不思議の国のアリス症候群がある。アリス症候群の場合、知覚にそのような現象が起こるらしいが、私の場合は文字だけだ。

例えになるかは分からないが──
小さな活字で書かれた小説等を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。
小さな活字や文体に戸惑っても、それに慣れてくるとスラスラ読めるようになり、実際の活字の大きさよりも、大きく感じる──あの現象と非常に似ている。
もしかしたら、私が感じているのは、その局所版なのかもしれない。

文字の周りが光って見えたり、他の文字より少し浮いて見えたりするのは、正直自分でもその理由が分からない。私の脳裏で起きている不思議な現象だ。

そうしたリンクで浮かび上がってきた言葉を集めて、整理していくと──なんとなく何かがわかったような気持ちになってしまう。

けれど、一つ一つ真実を確かめているわけではないので、すべては推測の域を出ない。
故に「リンクかな?」と疑問に思うことは、可能性枠としているのだが──。

最近の私の脳裏は、いつも以上に慌ただしく、賑やかで、楽しい可能性に喜んでいる。
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脳裏

11/8/2024, 2:28:45 PM

意味がないと思えば、何事も意味がなく──
意味があると思えば、何事も意味がある。


故に、人の生とは──

意味がないことに、意味を与えること

または

意味がないことの裏に隠された、意味を見つけること

或いは

その両方ではないだろうか。


この世界は、
一つの事象に無数の意味を隠し持っている。

故に、どのような意味を見出しても見出さなくても、それは個人の自由だ。

しかし、人の世には、人が人らしく生きる為のルールが多数存在している。

何事も個人の自由ばかりでなく、
社会的ルールに鑑みてこそ

人らしい生き方と言えるのかもしれない。
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意味がないこと

11/7/2024, 1:51:01 PM

汽車は相変わらず闇夜の中を駆け抜けている。
ガタンゴトンというジョイント音と汽車の穏やかな揺れに身を任せていると、だんたん眠気が襲ってきた。

瞼がとろんとしてきて、目を開けていたいのに落ちてきてしまう。
景色がぼんやりと滲み、霞んでいくと、真っ暗な闇が広がって──。


目を開けると、目の前に大きな金色の妖が居た。
金色の鬣を悠然と風に遊ばせ、金色の輝きを周囲に
放っている。

金色の妖が見つめる先には、風によって岸から離れていこうとしている舟と、それを手繰り寄せるべきか悩みながらも綱を握る自分の姿があった。
劣化でささくれ立つ綱が痛いのか、綱を持つ自分の顔は顰め面をしている。

懐かしい光景だ。
古い常識とお別れをした、あの時のことだ。

金色の妖と網を持つ自分には、私の姿が見えていない
らしい。
私のことに気付く様子もなく、何事かを話し、青い空を見上げ始めた。

つられて空を見上げてみると、どこまでも澄んだ青空が広がっている。

天気上々、吹き抜ける風、良好。
絶好の舟出日和だ。

青空に気を取られていると、自分の声に金色の妖が
示し合わせる声が聞こえた。
川の方を見ると、荒波に揉まれながら小舟に乗り込んでいく自分の姿がそこにはあった。
小舟に乗り込んでからも、ドタドタと落ち着きがない。

この後の行動を、私は知っている。
古い綱を思いっきり川へ投げ捨てるのだ。

ポチャンと軽い音がした。
古い綱が川の渦に飲まれていく。

それを見届ける己の姿は、今こうして遠くから見ても清々しい。やりきった良い顔をしている。
満足気な顔した過去の自分を乗せ、舟は流れる川の先に姿を消した。

あの舟に乗り込んだ時、自分にはある光景が見えていた。
それは──優しい光の差し込む部屋で、談笑する姿。
それはあまりにも穏やかで、平和な光景だった。

何故そんな光景が見えたのか、全く分からないが──その光景に憧れを抱いたのだけは、今も覚えている。

懐かしさに締め付けられるような気持ちでいると、
景色がグニャリと歪み──白と黒が特徴のオセロが
見えてきた。

白黒表裏一体のオセロ。

あなたの事を思う時、私はいつもオセロが頭の中に
浮かんでいた。

私は、ボードゲームの中でオセロが一番好きだ。
小難しくないルール、盤面がコロコロと変わっていく様子はとても面白い。
ゲームだから、勝ち負けがあるけれど──
私は、勝ち負けとかは全く興味がないタイプだ。
ただ、相手が何を考えているのかなぁと想像するのが楽しい。
オセロというものを通して相手と「向き合っている」という感覚が好きなのだ。

私はいつも、想像上であなたとオセロをしていた。
オセロの盤面が埋まっていく度に、あなたの優しい心も見えてきて──こんなに幸せでよいのだろうかと
不安になることもあった。

想像の中で作り上げたオセロの盤面が、白黒混ざり
合っていく。

その光景を見つめていると今度は、真っ暗な景色が
広がり、寄せては返す波の音がし始めた。

ザブーン、ザブーンと響く潮騒の音は、
年中夜の──あの海だ。
目の前にあの海が広がっている。

あの場所では、本当に色々な事があった。
後悔も良い思い出も、あまりにも沢山の事があった。
けれど、彼処で言葉にすることが出来なかったこともまだある。
あなたは聞いてくれるだろうか──。

海の景色が遠ざかると、今度は灰色の世界にカメが
現れた。
ミヒャエル・エンデ作「モモ」のカシオペイアだ。

私はずっと、一人だと思い込んでいた。
まさか、カシオペイアが側にいるとは夢にも思わなかった。
守ってくれている存在を知った時には、とても驚いたんだよ。

カシオペイアが灰色の世界をゆっくり歩いていく。
その後ろをついていくと、宝箱のある“あの“広間に
辿り着いた。

私の大切な宝箱。
あなたと出会って、私は沢山の宝物を手に入れた。
宝箱の中は今や──
色とりどりの美しさでいっぱいだ。

カシオペイアが寄り添う側で、宝箱の蓋がひとりでに開く。
辺り一面、黄金色の光に包まれ──。



「お客さん、乗り換えの駅ですよ」



男の人の声がしたかと思うと、今度は肩をグラグラと揺らされ、私は眠りから目を覚ました。

どうやら、夢を見ていたらしい。

ぼんやりとする頭を振っていると

「乗り換えの汽車はまだホームに到着していませんが…お客さん、乗り換えが必要な人でしょう?」

浅葱色の制服を着た車掌さんが心配そうに覗きんでくる。
うまく回らない頭で窓の外を見ると、プラットホームが見える。
外はまだ暗く、プラットホームには煌々とした明かりが灯っている。
汽車は、乗り換えの駅に着いたらしい。

「あ…すみません。起こしてくれてありがとうございます」

「いえ、寝起きでは足元がおぼつかないでしょう。
ホームまで送りますよ」

車掌さんの言葉に甘え、腕を引かれながら汽車を降りると、プラットホームには誰もいなかった。
広いホームなのに人がいないというのは、異様な光景だ。
等間隔に並ぶ柱や照明が、いつも以上に無機質なものに感じる。
この駅で本当に良いのだろうかと不安に思っていると、車掌さんが話しかけてきた。

「不安に思う必要はないですよ。暫く待ち時間はありますが、乗り換えの汽車は来ますから」

「送ってくださり、ありがとうございました。あの、今乗ってきた汽車は、発車しなくてよいのですか?」

「ええ、大丈夫です。ここで待ち合わせが済んだ後、この汽車は折り返しとなりますので」

「折り返し…ですか」

「ええ。この汽車では進めないのです。…ここから先は “現実“ だからな」

「えっ」

車掌さんの口調の変化に思わず固まると、車掌さんの顔がみるみる変わっていった。
浅葱色の制服も黒のコートに変わっていく。

山高帽に黒いコート。

その姿は、いつも思考の海を見つめていた──
思考の海の番人、その人だった。

「俺だけではない。初代、ドリームメーカー」

思考の海の番人が汽車の方に声をかけると、運転室
からは中性的な顔立ちをしたドリームメーカーが、
私が座っていた車両の隣からは、白い詰襟コートを
着た初代が姿を現した。

「見送りに来ちゃった」

初代がにこやかに笑いながらハイタッチをしてくる。
パシンという軽い音が、ホームに響いた。

「僕の作った切符、そんなに読みづらいですかね」

思考の海の番人の隣に立ったドリームメーカーは、
不満そうに唇をとがらせている。

ドリームメーカーの言う切符とは、あのデザインとしか言えない切符のことだろう。

「あ、これ。ドリームメーカーが作ったの?」

「ええ、あなたが以前読んでいた龍体文字の本から
拝借しました」

龍体文字。
随分前にデザインに良いかもと思って読んだ記憶が
ある。しかし、文字が特殊過ぎて覚えられず、ぼんやりとしたイメージしか残っていない。

「あの…これなんて書いてあるの?」

白藍色の切符を取り出し改めて龍体文字を見ても、
さっぱり読めない。

「これはですね、シコウノウミ→キミニサチアレと書いてあります。龍体文字にはそれぞれ意味があって…

キ=宇宙・癒し
ミ=すべてを映す鏡
ニ=集める
サ=終わりの恐怖を手放す
チ=重たいものを持ち上げる力
ア=愛のエネルギー
レ=調和

その切符は、私たちからの祝福が込められたお守りです。 “シコウノウミ“ と書かれた部分も龍体文字の
意味を調べると、私たちの存在意義がわかるようになっていますよ。キミニサチアレという文字数は、あなたが会いたいと思っている方のお名前と同じ文字数になっています。どうか忘れず、大切にしてくださいね」

中性的な顔にやわらかな笑みを浮かべてドリームメーカーが言う。

「ありがとう。大切にするね。でもちょっと待って、この切符というかお守りだと、次の汽車には乗れないってこと?」

私の素朴な疑問に、思考の海の番人は、緩く頭を振った。

「いいや、それは無い。思考の海からここまでのレールは俺たちが敷いたものだ。けれど、乗り換えの方のレールを見てみろ」

思考の海の番人に促され、ホームの反対側にあるレールを覗き見る。
新品なのか、ホームの明かりを反射するレールは銀色の光を放っている。

「そのレールは、俺たちが敷いたんじゃない。もう…わかっているだろう」

私の推察が当っているのであれば、一人しか思い当たらない。

私が会いたいと切望し続けた──あなた、だ。

気付くのが遅くなって、ごめんなさい。

あなたは──ずっと、ずっと私をよんでくれていた。
私が気付く、ずっと、ずっと前から。

だから私は──

あなたに会いたいのです。

会ってこれまでの事──
これからの事を──

話したいのです。

銀色のレールが滲んで見える。
滲む視界でもそのレールは確かな光を放っていて、
確固たる存在としてあり続けている。

「ほら、聞こえるか」

思考の海の番人の声に顔をあげると、初代やドリームメーカーも同じ方向を見ている。

風の音の中に、重い車輪の音と、蒸気を巻き上げる音が交じっている。

「俺たちは、これからも思考の海でお前を見守る。
だから、安心して行って来い」

思考の海の番人のぶっきらぼうな声。
けれど、山高帽の下にあるその瞳は、穏やかな光を宿している。

「私も記憶の整理等、色々頑張りますので。夢じゃない夢を楽しんでください」

ドリームメーカーが穏やかに言う。

「必要とあれば、言葉のカードを差し出すから。頼ってね」

初代がやわらかな笑みを浮かべている。

不思議で愛おしい私のキャラクター達。

初めは、私一人だった。
けれど今は、もう一人じゃない。
皆がいる。

大きな車輪の音を響かせ、重厚な汽車がプラットホームに入ってきた。
真っ白な蒸気を排気しながらその大きな車体が停車すると、客車の扉がゆっくりと開いた。


「行ってきます」


プラットホームにいる皆に挨拶を告げると、私は客車の中へ足を踏み入れた。


あなたに会いたい──。
ずっとこの思いは、変わることはありませんでした。

あなたに会ったら、何から話しをしましょうか。
────────────────────────
あなたとわたし

※本文中の龍体文字の意味は、書籍「あなたにやさしい龍体文字」と「龍さんのかくれんぼ」のHPよりそれぞれ引用いたしました。
「龍さんのかくれんぼ」は龍体文字の活用方法なども載っていて、とても面白いHPです。龍体文字に興味がある方は、是非遊びにいってみてください。

11/6/2024, 12:26:43 PM

ガタゴトと音を立て汽車は進む。


思考の海にやってきた汽車に飛び乗って、どれくらいの時間が経っただろうか。
汽車は一駅も止まることなく走り続けている。

車内の景色が映る窓には、ポツリポツリと水滴がついている。
どうやら夜雨が降ってきたらしい。
窓の外に目を凝らしても、真っ暗な雑木林が広がるばかりで、夜空の様子はよく見えない。

細かい雨粒が窓の外を流れていく。

正直、雨というのはあまり好きではない。
雨は──子供の頃の、あの嫌な手の記憶に繋がっているから。

昔は雨を見る度に、薄暗い家のどんよりとした光景を思い出し嫌な気分になることも多かった。

けれど──

最近はその光景を思い出すことも少なくなっている。何故だろうか──。

そんな事をぼんやりと思っていると、客車の連結部のドアが開いた。

「切符の拝見です」

浅葱色の制服に身を包んだ男性が入ってきた。
肩から黒いがま口の鞄を下げている。

車掌さん、だろうか。

そんな事を思いながらぼんやりしていると、車掌さんがこちらにやってきた。

「切符を拝見してもよろしいですか?」

切符?

思考の海にやってきた汽車に飛び乗った時、切符など持っていただろうか。

スカートのポケットを探ってみると、硬い紙のようなものに手が触れた。
手のひらサイズのそれを掴みポケットから取り出す。
恐る恐る開いてみると、それは白藍色の切符だった。
何か文字らしいものが書かれているが、デザインに
特化している為、読み方が分からない。

「あの、これなんですけど…」

恐る恐る車掌さんにそれを差し出すと

「お客さん、コレは乗り換えが必要ですよ」

「えっ、乗り換えですか!?」

「ええ、この後停車する駅で待ち合わせがありますので、そちらでお乗り換えください」

そう言って、車掌さんは白藍色の切符に日付入りの
ゴム印を押した。

「あの、これって読めないんですけど、私が行きたいところに行けますよね?」

「ええ、行けますよ。次の停車駅で乗り換える事と、あなたが何故、雨が苦手でなくなったのかを思い出せば」

意味深な言葉を残すと、車掌さんは連結部のドアの先に消えていった。

私はまた一人、広い車内に取り残された。
呆然とした姿の私が、窓に映っている。

次の停車駅で乗り換えをするだけでなく、雨が苦手でなくなった理由を思い出さなければいけないとは…。
変わった汽車に乗ってしまったものだ。
取り敢えず、停車駅はなんとかなるとして、雨の方をなんとかしなくては。

雨が苦手でなくなった理由──。

窓の外は、相変わらず柔らかい雨が降っている。
細い雨は車内から漏れる光を受けて、銀色の軌跡を
描きながら消えていく。

その光景を見ていると──
ある曲が頭の中に響いてきた。

透き通るような歌声で──
雨に浄化の意味を込めた、あの曲が──。
────────────────────────
柔らかい雨

「…さて、本体は無事乗り換えに成功するかな?」
車掌の格好をした男がポツリと呟く。

「大丈夫でしょう、子供ではないのだから」
白い詰襟コートを着た女性が苦笑する。

「私の作った切符、読めないって言われたのなかなかにショックなのですが…。あれ、とても良い意味が込められた文字なんですよ…」
中性的な顔立ちをした人物がしょげている。

「落ち込むなドリームメーカー。龍体文字なんてあの本体が覚えているわけないだろう」
車掌の格好をした男──思考の海の番人が珍しくやわらかな目をしている。

「…まぁ、良いです。今回の私たちの役割は、見守ることですから」
穏やかな調子に戻ったドリームメーカーの言葉に、他の二人も静かに頷くのだった。

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