ルールを守って生活すれば、みんなハッピーなのに。
どうして抜け道を探したり個性を出したりするんだと思う?
無駄だと思わない?
世の中を憂いため息をつく私。
にっこり笑ってあなたは言った。
「君もごみの分別、なかなかいい加減だけどね」
「女の敵は女、というのは間違い」
とか言うじゃん。
いやいや、女の敵は女でしょ。
子どものころを思い出してほしい。
女の子たちは、暴力的で陰湿で意地悪だったよ。
それが大人になると変わるの?
大人になっても、悪口ばかり言ってるけど。
「あなたもそう思うでしょ?」
なんて同調を求めてくるし。
他人なんて、みんな敵。
昔の学者は言ったよ。
万人による万人の闘争がうんたらかんたら。
私以外はみんな敵。
そんな中で味方になってくれるのは
画面の向こうの誰かだけ。
電車の発車まであと数秒って時。
あるいは、青信号が点滅している時。
そんな、走れば間に合うかもしれない、みたいなシチュエーション、あなたならどうする?
私は絶対に諦める。
焦る人を横目にゆったりと歩く。
疲れるほうがイヤだから。
間に合わなかった時が恥ずかしいから。
だから、今回も諦める。
この想いはもう、届かないから。
あの人に届けるには、遅すぎたから。
――本当にそれでいいの?
あの人なら言うだろう。
――息を切らして全力疾走、悪くないもんだよ。
そうだろうか。
今からでも間に合うだろうか。
――そんなの、わからないよ。やってみなきゃ。
――でもさ、失敗したって誰も笑わないよ。
そうだ。あの人は誰のことも馬鹿にしない。
ならば、たまには走ってみよう。
勇気を出してメッセージを送る。
「今度、ふたりでお茶でもいかがですか」
「まぶちぃっ」
玄関を出ると、娘が言った。
この世に生まれて1年とちょっと。
最近言語を習得してきた娘が言うことは、正しいときが半分、うーん違うよねってときが半分。
今日の娘は正解のほう。
「眩しいね」
見上げれば、雲ひとつない青空。
「お、いい天気じゃん!」
後ろから夫の声。
家族3人手をつなぐ。
快晴の空の下、さて、どこへ行こうかな。
卒業式で使った看板を、入学式に貼り替える。
ハロウィン商戦の飾りをクリスマスバージョンにするお店の人たちも、同じような気分なのかな。
先月卒業生を見送ったと思えば、もう新入生がやってくる。
この場所が好きだ。
子どもたちが泣いたり笑ったりふざけたりして大きくなる。
そんな場所に私はずっといる。
これからも、ずっと。