波にさらわれた手紙
砂浜に書けば届くだろうか
海に撒いたあなたへの手紙
8月、君に会いたい
8月、日差し照りつけるこの季節になると君のことを思い出します。
君は今、どこで何をしているのでしょうか。
君がいなくなってから3年が経ちました。
君の残したレモンの木は順調に成長しています。
僕の貸した10万円は順調に増えているのかな。
君の無事と投資の成功を願ってこの手紙を書いています。
風の噂で聞いた住所だから、君に届くかは分からないけど。
もう一度、君に会いたい。
お返事待っています。
眩しくて
あの人が眩しくて
私の心が照らされていく
あの人が眩しくて
私の心に影がおちる
あの日が眩しくて
未来がどうも暗く見える
あの日が眩しくて
眩まないように前を向く
熱い鼓動
朝目覚める。なんだか動悸がする。
心臓の音がドッドッと聞こえる。
それに呼応するかのように熱い気持ち、活力が湧いて出てくる。
仰向けで思う。
「今日を素晴らしい日にしていこう」
そんなこと思うのは何年振りだろうか。
こうしちゃいられない。
ガバッと上体を起こす。
その瞬間、体から何か転がり落ちた。
見ると、ハンマーを持った小さいおじさんがいた。
…ハンマーを持った小さいおじさん?
理解が追いつかないうちに、それは視界から消えた。
鼓動は止まっていた。
…私は叩かれていたのか?
…胸を叩かれた振動を鼓動と思っていたのか?
試しに胸の辺りを軽く叩いてみる。
鼓動するようにリズム良く。
さっきまでの熱い気持ちがまた湧いてくるような気がした。
タイミング
バスのドアが閉まり始める。
何とか体を滑り込ませる。
ギリギリのタイミングだ。
さぞかし注目を集めてしまっただろう。
顔を上げる。
他の客の視線は私、ではなく前方に集まっていた。
前を見ると目出し帽を被り拳銃を手にした男がいた。
バスジャックだ。
なんてタイミングだ。
心の中でため息をつき、目を閉じる。
そしたらよう、その滑り込んできた男の筋肉が盛りあがって、スーツも破けて、その中からヒーロースーツが出てきたのよ。
ありゃ、まさしくスーパーマンだな。
そこからは一瞬だった。
あっという間にのされて、気づきゃお縄ってわけよ。
あのヒーロー野郎、地球に来て一日目だってんだろ?
なんでそんな日にバスジャックなんてしちまったかなぁ、俺は。
とんだバッドタイミングだよ。