「なぁ、坂山(さかやま)、もう終わりにしよう」
「…は」
唐突に放たれたその言葉に、俺は驚いて思わず言葉を溢してしまった。
「なん…だよ、変な冗談、やめろよな…なぁ、雅口(まさぐち)…?」
「…」
俺は冗談だと思い、汗をダラダラと流しながら苦笑して雅口にそう言ったけれど、雅口は苦虫を噛み潰したように顔をしかめて目線を下に向けて黙り込んでしまった。
その様子からどうやら冗談ではないと言う事を知らしめられてしまう。
そんな…嘘、だろ…
「…」
俺も下を向いて黙ってしまう。
…そんな、嫌だ、嫌だ!こんな短い時間だけで、終わるなんて…!そんなの、嫌だ!!!
「なぁ、頼むよ雅口!考え直してくれ!頼む!!」
俺は握り拳を作りながら大声を上げて雅口に考え直せと叫ぶ。
「…すまん、坂山」
「…っ」
だがその言葉も虚しく、雅口はただ俺に謝るだけで考え込む素振りを見せない。
俺は息を呑む。
どうやら、もう駄目なようだ。
…しょうがない、最後は笑顔で終わらせるとするか。
「…なぁ雅口、俺、お前と一緒に遊んで、喋って、…すげぇ楽しかったよ。」
「…!」
「また、いつか、遊ぼうな…」
俺は目に涙を浮かべながら、雅口に笑顔で、きっといずれ来るであろう時間のことを話す。
すると雅口はどこか安堵したような、そして嬉しそうな笑顔で、
「…あぁ、俺も、お前と遊んでた時間は、楽しかったぜ。」
そう言ってくれた。
「…じゃあ、もういいぞ。雅口」
「―――あぁ…『ぷ』だったよな。」
「…うん」
「…『ぷりん』」
「…!これで、終わりか…あっという間だったな…雅口…」
「あぁ…そうだな…」
話し終わったあと、俺と雅口はお互いの手を力強く握り握手し終わると自らの鞄を持ち、教室から出て互いに別の方向の帰路についた。
またいつか、できるといいな…しりとり。
「…ねぇ、あの二人何してたのかな?」
「知らない方がいい。どうせまたアホなことしてたんだろうよ」