想い出と言う名の記憶
人は
日々過去を旅しては
感慨に耽け
感情の波を揺らす
何が変わる訳でもないのに
思い出さなければ
想い出にもならない
君との事は
想い出にはしない
したくない
終わりを
認めたくない訳じゃない
ただ
二度と思い出したくないだけ
無かった事にしたいだけ
「たくさんの想い出」
ブーツやコート
新調しても
行く所なんか無くて
行きたい場所は遠くて
今年の冬は
どこまでも優しい君の声が
温めてくれると信じてた
我儘だった夏
冬になったら
独りぼっちが身に染みて
それでも時薬が効いたから
泣いたりなんかしないけど
きっと時々
君の事
思い出すよ
「冬になったら」
沢山の言葉より
ただ抱きしめて
馬鹿だなって
笑われていたら
きっと全部
流せてたのに
貴方は遠かった
私も遠かった
二人遠過ぎて
そして
手も心も
届かないまま 二人
世界で一番
遠くなった
「はなればなれ」
もし今
子猫になれたら
馴れてる振りして君に近づき
その膝にしなやかに飛び乗り
撫でて頂戴と擦り寄りながら
甘く可愛く喉を鳴らすよ
そして
油断し緩んだ顔をして
優しく私を撫で回す
その手を
そしてその愛を
肉が裂ける程に深く
この爪で思い切り引っ掻いて
驚き歪むその顔を見届けたら
君の手の届かない場所へ
二度と触れられない場所へ
逃げてやるのに
きっとその傷は
生涯消えない
あの日君が切り裂いた
今も血を吹き出してる
瘡蓋にもならない
この胸の傷のようにね
「子猫」
秋風に吹かれ
さわさわと揺れる草や木々
見渡す限り黄金色の
大草原の中にぽつんといる
いや
誰かが一人
傍にいた気もする
そんな
記憶には無い
なのに
とてつもなく懐かしい
意味の分からないシーンが
締め付けられるような
物悲しさを帯びた切なさと共に
胸に浮かぶのは何故だろう
あれは何時の
誰との
何の記憶なんだろう
「秋風」