子供の頃
フェンスの向こうに
アメリカがあった。
青々とした芝生の上に
白い家がポツン。
そのまた向こうに
ポツンと建っている。
手入れの行き届いた庭には
子供のための大きな遊具が
必ずあった。
隣近所がひしめき合う
喧騒な環境で育った私にとって
そこは
踏み込むことのできない
贅沢な空間であった。
クリスマス近くなると
白い家の窓からは
クリスマスツリーに飾られた
イルミネーションの灯りが
漏れていた。
そのまた向こうの窓からも。
灯りで推測できるのは
家族で過ごす贅沢で静かな
クリスマス。
フェンス越しに見えるその風景に
憧れたものだった。
今でこそ街並みには
イルミネーションの輝きに
満ちているが
フェンスの向こうにあった灯りの方が
手の届かない綺麗さがあった。
今はもうない
遠いクリスマスの思い出。
#302
植物は正直だ。
たくさんの愛を注いだら
期待に応えて花を咲かせてくれる。
実もつけてくれる。
水やりは適量か
暑くないか
寒くないか
害虫はいないか
おはよう
きれいだよ
ありがとう
いつも私は植物と会話をする。
#291
「おいで」
私が両手を広げると
一直線に私の胸に飛び込んでくる。
子供はかわいい。
心と心が繋がるこの瞬間が
私は大好きだ。
生きている。
純粋なまなこを見てそう思う。
命を預かる責任の大きさに
身震いする。
尊い仕事をしていると
私は思う。
#284
私は何でもないフリをするのが
下手くそだ。
窓口でお客さんに理不尽なことを
言われてはへこむ。
何よ こんなの日常茶飯事よ。
気にしない。
って言って平静を装っているが
動揺してる。
家で落ち込むことがあったら
家族にばれる。
「どうしたの?何かあった?」
聞こえないフリをして家事をするが、
顔は語っている。
私は何でもないフリができない。
正直者だから。
それを長所だと思うことにする。
#277
子供は気まぐれです。
今日一緒に遊んだかと思うと、
次の日は別のお友達と遊んでいる。
今日は美奈子先生が
好きって言ってるけど、
明日はさゆり先生が
好きって言うかも。
昨日ブロックで遊んだでしょう
昨日の続きをしようよ。
そう言っても今日は絵を描いて
私の声は聞こえない。
私のことを仲間だと言っていたのに。
しょうがないな。
期待されて裏切られて
子供の心は七変化。
#262