【見つめられると】
私は昨年、東京大学医学部を卒業し医者になった。
今日は新しい患者が診察にくる。
「お名前を教えてくれるかな?」
「…さくら」
「そうなんだ、じゃあ何歳かな?」
「5つ」
さくらちゃんは肺炎になっていて、しばらく他の病院で
入退院を繰り返した。
普通の肺炎ならこんなに悪化しないのだが、発見が
遅れてしまい非常にまずい状態だ。
正直もう助かる見込みはない。
今日もさくらちゃんの病室へと向かった。
今日も元気いっぱいの笑顔でこう言う
「私ね、元気になったらケーキ屋さんになるの!
それでね、ママとパパとたっくさん遊んでね…」
さくらちゃんの目は希望に満ち溢れていた。
まだ、またに私の目を見つめてこんな事を聞いてくる
「私ってホントに元気になるの?」
どれだけ見つめられて、質問をされても私には正しい
返し方なんて分からない。
【My heart】
結構良さげな文が書けてたのに操作ミスで全部消えて
萎えたのでパスします。
気が向いたらまた書きます。
【ないものねだり】
私には双子の妹がいる。
私は勉強が得意で運動が苦手。
妹は運動が得意で運動が苦手。
私は校内順位30位には入るくらいには勉強が得意だ。
それに対して妹は陸上の県大会に出場するほど運動が
得意だ。
私は勉強が出来るのは勿論いい事だと思っているけど、
最近は妹のようにすばやく走ったりしてみたいとも
思っている。
だが、運動だけはどうしても出来なかった。
対して妹も運動だけでなく、勉強も出来るように
なりたいらしい。
私達の体が1日入れ替わったらどんなに思い通りに
過ごせるだろうか。
全く、私達は2人そろってないものねだりだ。
【好きじゃないのに】
「今日も顔面良すぎ!!」
私はまた今日も推し活をしていた。
推しのカイト君。
優しくてかっこいい。たまに見せる天然な所が彼の魅力
だ。大体30万くらいは彼に使っている。
だが最近その熱も冷めつつあった。
けれど、なんだか使ったお金が勿体無く感じ、今も
彼を推し続けている。
またいつか熱が戻るだろうと思い、今日も彼のグッズを
眺める。
もう好きでもないのに。
【ところにより雨】
去年結婚したおれたち夫婦は早速子供を授かっていた。
両方親が小さい時に亡くなったので、なんだか気が
あって毎日楽しかった。
この日もそうだ。
「この子の名前は何がいいかしら…」
「そうだな…夏に生まれてきてくれるから、夏樹とか
どうだ?」
「夏樹…いい名前ね」
「夏樹、どうか元気に生まれてきてね…」
会社でいつも通り仕事をしていると、一本の電話が
鳴った。
妻が予定日よりかなり早く産気づき、今出産している
とのこと。
おれは急いで仕事を中断し、病院へ向かった。
病院に着くと医者が言った。
「お子さんは無事に生まれましたが、母子共に危険な
状態です。後はお母様しだいです。」
おれは無事を祈るしかなかった。
医者がまた手術室から出てきた。
「すみません…。手は尽くしたのですが…」
おれは人目を気にせず泣き崩れた。
あの日も日差しの強い、夏らしい日だった。
だがまるでおれの居るところだけ雨が降っているよう
だった
「ところにより雨」