3/25/2026, 12:45:57 PM
#️⃣好きじゃないのに
肌寒くて足を擦り合わせる。布団の中から見上げる蛍光灯をつけるのに手を伸ばすのも億劫で、前に住んでいたリモコン式の電灯が懐かしくなった。
(疲れた…)
大地は頭痛に眉を寄せ、手の甲で熱を測るように置く。スマホの明かりが暗い部屋で煌々と光った。
「……せんぱい…」
「おう、お前今日風邪だろ?大丈夫かよ、なんか買っていこうか?」
「来ないでください、うつりますから」
「食うもんあんのかよ?」
「水飲むんで…」
「ははっお前、それじゃあ熱下がった時にぶっ倒れるぞ。てか、もうついたわ。ドアノブに掛けとくから」
「まって…いるんすか?」
コンコンと扉が鳴った。
「いるぜ、会わないって…別れた恋人の看病までしないからよ」
「そう言ってきてるじゃん…」
「じゃあ早く風邪治せよ」
電話が切れて、歩き去る音がした。階段を降りていく音が響いた。
大地はゆらっと起き上がって掛けられていた買い物袋をゴゾゴゾと取ると扉に鍵をした。
「納豆……好きじゃないのに」
先輩は三年も一緒に住んでた。それなのにこんな初歩的なことも覚えてくれない、あの人と別れたのってこんなつまらない所だったな。