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3/8/2025, 1:26:58 PM

秘密の場所

「じゃあ、行ってきます」
「夜には帰ってくるのよ」
「うん」

やっと出られた。
オレは家には居たくない。なんだか窮屈だし、オレには合って無い気がする。

オレはどうすればいいんだろう。

秘密基地でも作る?いや…小学生じゃあないんだし

そうしてぶらぶら歩いていたら、オレは家の前にいた。
秘密基地なんて作らなくても、ここはもう秘密の場所みたいなもんだったのかも知れない。
母さんが作る肉じゃが、父さんと見る野球、その一つ一つがオレの家族だけが知ってる事だから。
「ただいま、オレの秘密基地」

3/6/2025, 11:38:31 AM

風が運ぶもの

寒い。もう2月後半だというのに、とても寒い。
こんな寒い中、私達は卒業式練習する。
卒業式練習は体育館で行う。体育館はとても寒い。
体育館はまさに自然の冷蔵庫だ。
はぁあ、やる気出ないなあ…

「柔らかな日差しが、大地をつつみ!」
「新しい命を運んでくる、希望の春」

…まだまだ春じゃあないなあ
なんて思ってたよ、私。

「撮るよ!」

カシャ。
私は卒服に身を包み、笑顔で少し泣きそうな顔で写真を撮られた。

卒業式も終わり、学校の校庭を歩いていると、
桜が舞った。

「…桜…」

希望の春を、風が運んできてくれたのかもしれない。

「ありがとう、私達の小学校」

友達が呼ぶ。私は駆け出す。

また、風が運ぶもの。

3/4/2025, 1:29:27 PM

約束

結婚しよう!
そうゆう約束する園児は何度か見た。
私は保育士をやっている。

そんな私も一度言われたことがある。
大人になったら結婚しようって。
あの時ああ言ったアイツ。
今、何してんのかなぁ…あ、そろそろ私帰っていいかな?いいよね?あがりだし。

「はぁー…」
あのあとまだ帰らないでーって園長に言われて
結局残業みたいな感じだったよ…
結婚とか、考える暇ないなぁ…
そろそろ、婚活しないとなのかなぁ

ピコン

通知?誰かなぁ
「ッえ!?」


私は走った。
今歩いてきた道を、歩きやすいように買ったスニーカーで。

「田中、、」
「や、久しぶり。同窓会ぶり?」
「何言いにきたのよ。また告白?」
「そーだよ」
コイツは、私の幼なじみで保育園の時から私の事が好きだったらしい。
私はタイプじゃあないけどねぇ
「好きです!!愛してます」
ドキっ

今、胸がときめいたような。
いやいや
気のせい…でしょ
だって私、タイプじゃないし

「返事はぁ?」

あーぁもぉ!

「いいよ」

「付き合ってあげる」

満月の下、私は初めて答えた。
好きだと。

3/3/2025, 11:57:23 AM

ひらり

桜が舞った。
今日はお散歩日和の暖かい日。
お花見するのにはちょうどいい。
今日、僕もお花見に来た。


ひらり、桜が君の肩に乗って、
「ついてるよ」
僕はその桜をとった。
そんなことがあった。
去年までは。

去年まで一緒に来ていた彼女。
桜が舞って綺麗だねって言う君が可愛いかった。
出店でお団子を買って食べたの覚えてるかなぁ
来年も、再来年も、またその次も…
来ようねって約束した事。
覚えてる…?

『覚えてるよ』

「え?」

君がそこにいた気がした。
気のせい?
まあいいや。

来年も、再来年も、またその次も…

僕は、あの時の僕のまま、またここにくるから。

3/2/2025, 11:25:38 AM

誰かしら?

「あなた…だれ?」
彼女が交通事故にあった。
記憶障害を負うことになった。
もちろん、俺との思い出も全て忘れてしまった。
「俺は、俺はあなたの彼氏だよ」
「彼氏、なの?」
「うん。いろんな所に行ったんだ」
「そうなんだ。例えば?」
「まって、今写真があるはず」
「わ、楽しそう…これ、私?」
「そうだよー」
俺は遊びに行った時の写真を沢山見せて、思い出も沢山話した。


「そうだったんだね…私、幸せだったんだ」
「幸せ…」
記憶があった時の彼女には、言われたことがなかった。
もしかして、記憶があったときからそう思っていたのかな。
「ねぇ、また、付き合おうよ」
「え」
やっぱりだめだよな…付き合ってたとしても初対面みたいなもんだし…
「付き合ってるんじゃ、ないの?」
「えッ」



初夏、俺たちはまた2人の思い出を作ることを病室の中誓うのだった。

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