すれ違いって、
すごく近い距離で使う言葉
彼とすれ違うのは、
廊下の端と端
階段の端と端
教室や体育館のすみっこ
すれ違いなんて言葉も使えない距離
でも、いつでも、
探さずにはいられない
私だけの「すれ違い」
せずにはいられないの、
たった一人、彼だけは
#すれ違い
「忘れたいの」
「忘れてしまいたいのよ」
「あの人と見た風景
あの人と歩いた道
あの人と聞いた雑踏
横顔、視線、声、仕草…
何もかも、すべてが、
私を追いかけてくるのよ!」
彼女の耳に光るピアスは
彼が褒めたシルバー
彼女の指にあるのは
彼と選んだサファイア
あぁ、きみは
忘れたいんじゃない
忘れたくないんだ
でも、認められないんだね
「忘れたくても忘れられないのよ」
今日も、彼の影をまとっている
#忘れたくても忘れられない
俺の肩下に、
いつも君のつむじを見ていた
俺を見上げる
いつも怒った顔で
「また見下ろしてるぅ」
仕方ないだろ
小さいけど、存在感は大きいんだから
十分だよ
なのに、
煙突から白い煙がまっすぐ立ち上る
俺から、
あんなに高く高く
いってしまった
馬鹿野郎
俺を置いて逝くなよ
#高く高く
「ごめん
離婚することになった」
10歳のきみは
大人のように悲しく目を伏せた
そんなきみを見た40歳のぼくは
子供のように号泣した
#子供のように
傷ついてなんかない
悲しいなんて言葉でくくらない
私の涙は
誰にも見せない、見せてやるもんか
だから
誰もいないとこなら
泣いても、いいよね
本当は傷ついたんだ
ものすごく悲しかったんだ
#涙の理由