言の葉

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10/10/2024, 9:22:56 AM

今日も、へんくつじいが、
縁側に座って本を読んでいた
度が合ってないのか、
老眼鏡は鼻眼鏡になっている
庭の花壇には、今年も白いチューリップ
今年も春が来たなぁ

へんくつじいは一人暮らしだけど、
毎日きっちり生活している
だけど、近所のおじちゃんやおばちゃんは
なにかと気にかけて、覗いている
いつしか私もその一人になった

へんくつじいは、
まだ赤ちゃんの頃にお父さんと死に別れ、
母子家庭で苦学したという
初恋を実らせて(みんな驚いたらしい)
幼馴染のお嫁さんと結婚
この家で、3人仲良く暮らして、
もうすぐ4人目が増える、という春
へんくつじいは一人になった

事故で母と妻と子を亡くしたへんくつじい
見る影もなかったという
何度目かの春、
ついにへんくつじいを庭に引っ張り出し
「庭も花壇もめちゃくちゃだ!
二人が好きだった庭なのに!」
この言葉でへんくつじいは正気に戻って、
今のへんくつじいになったという

今日も、へんくつじいは
きっちり生活して、庭の手入れをしている
夏にはひまわりが咲くだろう



#過ぎた日を思う

10/8/2024, 3:55:09 PM

長文になりますが、
お付き合いいただければ幸いです。

 著 笹本祐一
 妖精作戦シリーズ 全4巻

かつて谷川流が
かつて有川ひろが
かつて秋山瑞人が
かつて小川一水が

心を熱くした小説

私も高校生の時に読んで、夢中になった
何度も読んだ10代
20代の時にも読んだ
その後は読み返すことは稀だけど
決して手放さない、大好きで大切な小説

この小説の読者は
おそらく天文学的数字になるだろう

なぜなら、
初版は1984年
10年後の1994年に新装版として
さらに、初版から27年後
2011年に復刊された

私は田舎の高校生で、
新宿や国立は地図でしか知らないし、
バイクを整備したり、
英語で話しかけたり、
そんなことは全くできない、
平凡な女子高校生だった
でも
彼ら彼女らの世界に引き込まれた
セリフが声になり
アクションが目に浮かんだ

そんな、私の、
過ぎた日を思う



#過ぎた日を思う

10/6/2024, 5:37:05 AM



     ここが宇宙ならよかった



     あなた と わたし


     
     何光年も離れていても



     見えない糸でつながれて



     ひとつの星座になりたかった




#星座

10/5/2024, 9:43:05 AM



   「踊りませんか?」

   老舗テーラーを着こなして
   柔和な笑顔
   差し出された綺麗な指先

   「結構よ!」

   違う
   私がほしかったのは
   こんな、
   こんな、
   不慣れな幼女に親切な紳士じゃない

   私は大人になったのに
   
   悔しくてぎゅっとドレスをつかんでしまう



#踊りませんか?

10/4/2024, 7:33:26 AM



  つきあって2年目のクリスマス
  コースのデザートを食べながら
  彼がふっと視線を逸らして
  「そろそろ、ご両親に挨拶しようか」
  あ
  「…うん、予定確認して、LINEするね」
  安堵して破顔する彼に
  私は上手に笑えただろうか

  5年、5年間、待っている「彼」
  今、私の眼の前にいるのは、
  「彼」じゃないけど
  私を望んでくれる人
  
  彼のおかわりのコーヒーに
  白い砂糖がさらさらと流れるのを
  じっと見つめる

  今度、会えたら
  巡り会うことができたら
  絶対「彼」と一緒に行く

  「彼」と巡り会えたら



#巡り会えたら

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