言の葉

Open App
10/17/2024, 10:16:54 AM



「忘れたいの」
「忘れてしまいたいのよ」
「あの人と見た風景
あの人と歩いた道
あの人と聞いた雑踏
横顔、視線、声、仕草…
何もかも、すべてが、
私を追いかけてくるのよ!」
彼女の耳に光るピアスは
彼が褒めたシルバー
彼女の指にあるのは
彼と選んだサファイア

あぁ、きみは
忘れたいんじゃない
忘れたくないんだ
でも、認められないんだね
「忘れたくても忘れられないのよ」
今日も、彼の影をまとっている




#忘れたくても忘れられない

10/15/2024, 6:05:12 AM



    俺の肩下に、
    いつも君のつむじを見ていた
    俺を見上げる
    いつも怒った顔で
    「また見下ろしてるぅ」
    仕方ないだろ
    小さいけど、存在感は大きいんだから
    十分だよ
    
    なのに、
    煙突から白い煙がまっすぐ立ち上る
    俺から、
    あんなに高く高く
    いってしまった
    馬鹿野郎
    俺を置いて逝くなよ




#高く高く


10/14/2024, 9:49:31 AM




   「ごめん
    離婚することになった」

   10歳のきみは
   大人のように悲しく目を伏せた

   そんなきみを見た40歳のぼくは
   子供のように号泣した

    





#子供のように

10/11/2024, 8:22:11 AM




     傷ついてなんかない

     悲しいなんて言葉でくくらない

     私の涙は

     誰にも見せない、見せてやるもんか

     だから

     誰もいないとこなら

     泣いても、いいよね

     本当は傷ついたんだ
     ものすごく悲しかったんだ




#涙の理由

10/10/2024, 9:22:56 AM

今日も、へんくつじいが、
縁側に座って本を読んでいた
度が合ってないのか、
老眼鏡は鼻眼鏡になっている
庭の花壇には、今年も白いチューリップ
今年も春が来たなぁ

へんくつじいは一人暮らしだけど、
毎日きっちり生活している
だけど、近所のおじちゃんやおばちゃんは
なにかと気にかけて、覗いている
いつしか私もその一人になった

へんくつじいは、
まだ赤ちゃんの頃にお父さんと死に別れ、
母子家庭で苦学したという
初恋を実らせて(みんな驚いたらしい)
幼馴染のお嫁さんと結婚
この家で、3人仲良く暮らして、
もうすぐ4人目が増える、という春
へんくつじいは一人になった

事故で母と妻と子を亡くしたへんくつじい
見る影もなかったという
何度目かの春、
ついにへんくつじいを庭に引っ張り出し
「庭も花壇もめちゃくちゃだ!
二人が好きだった庭なのに!」
この言葉でへんくつじいは正気に戻って、
今のへんくつじいになったという

今日も、へんくつじいは
きっちり生活して、庭の手入れをしている
夏にはひまわりが咲くだろう



#過ぎた日を思う

Next