職場から最寄りの駅まで
職場から最寄りの飲食店まで
一緒に歩くようになり
一緒に行動するようになって
その後は、必ずしも職場からの道ではなくなり
待ち合わせた先から
知ってる店、知らない店まで
地図を頼りに歩いた
家族になってからは
家からスーパー
家から駅
特別な場所ではない
日常的に使う道も、一緒に歩いたよね
沢山の道を貴方と歩いて
多分、忘れてしまった道も多いけれど
通れば、きっと、ほとんど思い出せると思うの
そんな記憶と一緒に
私は今後、一人の道を歩いていかないといけないの
お題『君と歩いた道』
言って欲しかった、キミに
言われたかった、ワタシ
けれど、言われなかった
キミは他の誰かに
その言葉を使ってしまったの?
ワタシの前から消えてしまった
ワタシは何処にも行けないまま
今日もココで
キミに言われるのを待ってるの
ずっと、ずっと、待ってるの
お題『さあ行こう』
「分かれよう」
私に「キレイだよ」「愛しているよ」と、過去に何度も言ってくれた彼の唇が。その同じ唇が、今はハッキリと、離別を告げる。
別に好きな人ができたから、と。
薄々、気づいてはいた。少し前から、きっと浮気されているな、という漠然とした確信があった。
こちらから指摘しなかったのは、私の中にも既に、彼への愛情がほとんど残っていなかったから。
「そう。わかったわ」
そう答え、足元に視線を落とせば、水たまりに映る空は先ほどまでの雨が嘘みたいな抜けるような青で。今の状況と相反しすぎていて、やけに印象に残った。
3年後
「僕と、付き合ってくれませんか?」
職場の後輩からの、突然の告白。
正直、嬉しい。でも…。
あの日の水たまりの青色が脳内に蘇る。
「…ごめんなさい」
自分でも驚くほど、弱々しい声が出た。頑張って相手の顔を見ると、苦しそうな、哀しそうな目をしていて。
「…理由を、聞いてもいいですか」
問われたけれど、今の気持ちを何と説明したら良いか、自分でも分からなかった。しかし、目の前のこの人には、嘘やごまかしはしたくないとも思った。
「…昔、付き合っていた人がいたの。1年くらいで別れちゃったんだけどね。…その人が、忘れられないとかではないの。お互いに早い段階で気持ちが冷めてしまってたのは、分かってた。ただ、最初はどんなに互いを好きだと思っていても、時間が経てばその気持ちも薄れて、消えてなくなることがあると、知ってしまったの」
「…」
「…誰かと付き合うと、また、その時の気持ちを味わってしまうんじゃないかと、繰り返してしまうだけなんじゃないかと思うと…」
「…怖い、ですか?」
「…そう、ね。怖いのかもしれない」
「ひとつ、質問いいですか?」
「?ええ、どうぞ?」
「僕のことが嫌いとか、そういうのはない、ですか?」
「貴方のことは嫌いじゃないわ。むしろ、好意を持って貰っていると分かって嬉しかった」
「じゃあ!…じゃあ、改めて言います。僕と付き合って下さい」
「…でも、」
「僕が、この先、貴方に対する気持ちを変わらず持てるかと言われれば、それは僕にも分かりません。でも、だからといって、今の自分の気持ちに蓋をしたまま、好意の気持ちがしぼんでいくのを待っているのは勿体ないと思うんです」
「…勿体ない?」
「そうです!勿体ないです。ただ静かに待つより、今の気持ちに正直に、素直にまっすぐ向き合いたいです。それは、自分自身の気持ちだけじゃなくて、貴方の気持ちにも、です」
「…」
「気持ちは、時間の経過や、環境の変化や、色々なことで変わると思います。その時々に思ったこと、感じたこと、僕に教えてくれませんか?僕は、今、自分の中の変化や感じたことを、貴方に聞いてもらいたいって思ってます」
そんな風に、考えたことはなかった。3年前の彼とは好き同士で側にいたけど、互いのやりたいことだけして、言いたいことを言い合うだけだった。今どんな風に思ったとか感じたとか、話をした記憶がない。元彼だけじゃなくて、私自身も、だいぶ自分勝手な行動をしていたのだと、やっと気づいた。そして、普段は仕事を教える立場の後輩に、逆に教えられてしまったことにも気づく。
「私も、まだまだ、ね」
「え?」
「ううん。何でもない。…○○君」
「はい!」
「私、仕事はある程度できる方だと思うけれど、人付き合いは…。今の私とのやり取りで少し分かったと思うけど、あまり得意ではないの」
「…はい」
「こんな私だけれど、もし良ければ、私の気持ちを聞く相手になってくれない?」
「…っ!それって」
「私も、自分の気持ちに少し素直になって向き合ってみたくなったわ。それに、○○君の気持ちや考えも、聞いてみたい」
「つまり、お付き合いしてもいいってことで、いいですか?」
相手の目が、みるみると輝くのが分かる。
恥ずかしいけれど、ちゃんと顔をみて、頷く。
「…やった。やった〜っ!!!」
勢いよく私に抱きつく後輩は、大型犬の突進に近いものがあり、面食らってしまう。
「○○君、ここ、そと…」
「嬉しい!嬉しすぎます!絶対に振られるだろうなって覚悟してきてたから。心臓もバクバクで。でも僕の中の気持ちが、もういっぱいいっぱいで、隠し通す自信がなくて。それに、他の誰かに先越されたらとか考えるとですね」
私の身体を抱きしめたまま、後輩の独白は続く。暫く止まりそうもない様子が微笑ましくなってしまい、ここが公園で人目に晒されているという状況すら、どうでも良くなってしまった。
ふと、視線を落とす。
水たまりに映る、綺麗な青。
あの日よりも、澄んだ青色に、少しだけ安堵する。
次から青色を見る時は、あの日じゃなくて、今日という日を思い出せそうで。
-一旦、終わり-
お題『水たまりに映る空』
無意識に姿を探して目で追う
話していると知らず知らず笑顔になる
なぜか貴方も、私を見かけるとコチラに寄ってくる
なぜか話していると、欲しい言葉をくれる
一緒に居れるなら延々と一緒に過ごしたいし
別れ際が寂しい
次に会えるのはいつだろうと
また、無意識に考えている
これは、この気持ちは、
恋か、愛か、それとも
まだ友情の範囲?
答えは自分の中で
とっくに出ているはずなのに
気づかないふりして
今日も貴方に会う
お題『恋か、愛か、それとも』
視線がいつもより低い。建物も看板も人も高くなった?いや、俺が小さいのか…?
(なぜ小さくなった?俺は何処に向かっている?)
そんなことを考えている間にも、俺の意思とは無関係に身体は動いていく。どうやら夢を見ているようだ。
見慣れた街並みを抜け、公園の中へ。遊具エリアを通り過ぎて敷地の奥まで進み、茂みを一つかき分けると突き当たる大きな木を、右から裏手に回る。
次の瞬間、目も開けられないほど光が溢れ、景色が真っ白になる。徐々に眩しすぎた光がおさまると見えてきたのは、先ほどまでの公園ではなく、現実味のない不思議な空間だった。大小、様々な大きさの水の玉が宙を漂っている。水の玉そのものが淡く発光しているので、足元が地面ではなく水面であること、なぜかその水の上をペタペタと歩けていることが分かった。
懐かしい、と不意に思った。
そう、俺は、この光景を知っている。
「約束どおり、来たか」
不意に、澄んだ声がこだまする。声の方を向くと、白の衣をまとった少女が立っていた。
「もちろん」
夢の中の俺は得意げに答えている。
「確かに、私が言ったとおりに10日間、同じ時刻、同じ道順を辿り、お前はここに来た。だから私も約束は守ろう。だが、本当にいいのか?」
「なんで?」
「前にも説明したが、人ならざる私と縁を結び、契約関係を持てば、現実の世界に影響が出る。本来なら見えぬはずのモノが見え、聞こえぬはずのモノが聞こえ、それは時としてお前を煩わせるだろう。それでもいいのか?」
「だって、そうしないとキミにはもう会えなくなる。オレは、キミに会えなくなる方が他の何よりもイヤなんだ」
「…わかった。では、これ以上は私からは何も言うまい。…契約の時だ」
少女の周りに光が集まり、彼女を完全に包む。
「汝の求めに応じ、我は汝と契約す。我が名を呼び求めさえすれば、いつ、いかなる時にも、汝の元へ現れる。忘るることなかれ、我の名は、―――」
ジリリリリリリリ
けたたましいアラーム音で目を覚ます。見慣れた天井のはずなのに、他人の家みたいな違和感があるのは、先ほどまで見ていた夢のせいに違いなかった。いや、正確には単純な夢ではなく、幼い日の記憶を辿った夢だ。
なぜ、今の今まで、あの日のことを思い出しもせず過ごせていたのか。なぜ、今、思い出せたのか。
そんな「なぜ」がどんどん湧いて出てくるが、頭を振って思考を停止させる。
(待て。ちゃんと思い出せ。あの日、確かに俺はあの少女と、彼女と契約した。彼女の名は、たしか)
『水月(すいげつ)』
口にした途端、頭に声がこだました。
「全く。あんなに可愛らしく『絶対、名前呼んだらすぐ会いに来てよね。約束だよ?』とか言っておきながら、あのあと一度も呼ばなかった奴が、急に呼び出したりするんだからな」
ガバっと起き上がると、ベッド脇には見慣れた、そして、ひどく懐かしい姿があった。
「…久しいな、少年。約束どおり、会いに来たぞ」
-一旦、終わり-
お題『約束だよ』