「どうして君が……」
昨日までここにいたはずの君は今、モノクロの写真の中で変わらない笑顔で笑っている。
君がいないこの世界に価値なんて見い出せなくて、何度後を追うことを考えたかわからない。
僕にとって君が全てだった。
君を中心にまわっていたはずだったのに、それは音もなく崩れ落ちた。
それなのにこの世界はなんの変化もなく明日が来る。
まるで君がいたことなんて忘れ去るかのように。
彼氏だという理由では忌引にならない学校を欠席し、彼女との最期の別れを交わす。
流れる涙を抑えることなんてできずに、彼女の両親と共に肩を震わせている。
もう二度と目を覚まさない君を天に見送り、泣きながら家に帰った。
君と二人で過ごした部屋は一人だととても広くて、思い出が君がいた事実を無情に突きつけてくる。
翌日、泣き腫らした瞳を擦りながら支度をする。
癖で作ってしまった2人分の朝食を冷蔵庫に入れて、家を出る。
僕の心とは対照的に憎たらしい程の青空が広がる。
照りつける日差しを睨みながら学校までの道を歩く。
「お前死ねよ」
「まじで今日死にそう」
「うわ、もう死にたいわ」
すれ違う高校生たちから聞こえてくる『死』という単語に敏感になってしまう。
そんな簡単に言うなよと、喉元まで出かけた言葉を飲み込む。
なぜ彼女が死ななければいけなくてこいつらが生きているのかと邪な考えが思考を埋める。
そんなことを君は望んでいないはずなのに
どうして僕だけが生きていて
どうして君だけがいなくて
どうして僕ら二人は会えなくて
どうして僕は死にたくて
どうして僕は死ねなくて
どうしてどうして……
『どうしてこの世界は』
「こんばんは」
あの日初めて君と交わした言葉
それが今では当たり前になった
君の声を聞く度に僕はまた君のことを好きになる
今日まで日々は長いようで短くて
君と過ごせる時間がなによりも幸せで
こんな日々がいつまでも続けばいいなって願ってる
今はまだなんでもない僕らだけど
それでも僕は君の隣にいたい
これから先の長い人生の道のりを
君と歩けたら……なんてね