10/30/2023, 12:10:52 PM
中高の六年間、俺はただひたすらに同じ道を歩いた。
浮間舟渡から芝浦工大中高までの片道十五分。
高価の下のハトフン臭い駐輪場を抜けて、空き地の横の細い道を行く。そして荒川を渡る橋。日差しを遮るものがない三分の道のり。
橋を行く学生はみな、夏の暑い日には柱のアーチの影の上を歩いていく。
橋を越えても面白いものは無い。
整備されていない遊歩道からオリンピックを渡り、環状8号線の広い横断歩道へと出る。
そこは本当にただの道で、店がない訳では無いが、人間の体感としては本当に何も無い。
横断歩道を渡る。何らかの車のディーラーがある。
大通りから一本入ればマンションばかりの味気ない住宅地だ。住宅街ではない。断じて。
そしてもう左手には学校がある。
網の向こうに、ゴム製のグラウンドで、運動部が朝練をしている。
緑色の母校。
もう、そこには何も無い。
もはやそこすらもマンションに飲み込まれた。
だから俺が思い出せる、懐かしむことの出来る、そして感傷のために辿り着けるのはその道だけだ。
通学路にこそ、俺の思い出がある。