━━━━━━━もっと高く。
自分の身長よりも高く。
あの子の身長よりも高く。
家の屋根よりも高く。
学校の屋上よりも高く。
あの大きなビルよりも高く。
もっと高く。高く高く………飛んでゆけ。
しゃぼんだまとんだ やねまでとんだ やねまでとんで
………………壊れて消えた。
太陽は今日も明るくて、君の笑顔はまぶしい。
何気ない日。
今日は祭りがあったっけ。
今日は一限目から数学だ。
今日は避難訓練って言ってたな。
でも今日は、あの子に会える。
ココロオドル、今日はいい日だ。
憧れの人の、LINEを入手した。
人づてではあったけど、なんとか認知してもらえて嬉しかった。
色々話題を持ち出したりして、それなりに話せるようになると、敬語も外すことが出来た。
順番は違うが、話題が途切れると自己紹介てきなものをしたり、実際、楽しかった。
でもなんか、クラスも同じなのに直接話すのはハードル高く感じて、いまだに話せずじまい……。
……そういえば、紅葉が目立ち始めて数日。もう秋だ。時間が流れるのは異様に早く、彼女とやりとりを始めてから半年以上もの月日が流れていた。
彼女が好きな季節、なんだったっけ?
『好きな季節、なに?』
「秋🍁!」
あれ……ここのジャングルジムなくなったの?
不意に友人が指さした方向を見ると、そこには小さな公園があった。
……そういえば、この公園自体なつかしい。小さい頃はよく遊んでいたが、近くに大きなショッピングモールができてからはめっきり来なくなってしまっていた。
この公園は、小さくて遊具も少なかったけど、大きなジャングルジムと静かな立地にあるということで気に入り、私たちはよくここへ来ていた。
高校生にもなればその事実もすっかりわすれていたけど、平日も休日もほとんど毎日来ていたなと思い出す。
……形あるものはいつか壊れるって言うけど、意識してなかったものが急になくなると驚くもんだな。
物は大切に、ね。
『鏡』
毎朝ニュース番組とともに放送される、じゃんけん対決。
それはテレビのリモコンを操作することで参加できて、勝てばキャンペーンに応募できるというものなのだけど、小学生のあの子は学校に行く前にただただキャラクターとじゃんけんをしていた。
けれど運が悪いのか、何度やってもあの子が勝てる日はこなくて、あの子も悔しかったみたいで毎朝じゃんけんの前に洗面所で練習してたみたいなのね?
その練習方法が驚きでね、あの子ったら、【鏡にむかってじゃんけん】してたんですって。
意味ないわよね…でも、子供の発想っておもしろくて、見ていて楽しいのよ。
それからしばらくしても、あの子が番組のじゃんけんに勝つ姿を見れることはなくてね、まだかまだかと様子見してたんだけど…ある日にあの子、不思議なことを言い出したのよ。
「おっかしいなぁ…いつもは勝てるのに……」
って。
おかしい話ではないわ。このニュース番組のじゃんけん対決以外でも、学校とか友達と遊ぶ時とか…じゃんけんをする場なんていくらでもあるし。
…ただ、ちょっとだけ違和感を感じて………少しの好奇心で、あの子が鏡に向かってじゃんけんしてる様子をスマホで撮ってみたのよ。
その時はあの子自身を見てたから気づかなかったんだけど…あの子がその日もじゃんけんに勝てずに学校に行ったあと、動画を見返してみたの。
そしたら…あの子、鏡の自分に勝ってたのよ。
さすがに気味悪くて、動画は直ぐに消して、帰ってきたあの子に鏡の前でじゃんけんはやめるよう言ったわ。
…鏡は自分をうつすだけじゃないこともあるみたいだから、気をつけた方がいいわ。