「あんたの弁当なんかいつも茶色くない?」
「はあ」
薮から棒すぎて、間抜けな声をあげながら向かいの女の顔を2度見してしまった。
私たち、確か今季のアニメの話してたよね?
お弁当に添えていた左手を動かしてこころもち向かいの視線を遮りつつ、流し目で敵情視察。挑戦者青コーナー、肉じゃが、ごぼうのきんぴら、えのきの肉巻き、梅干し、プチトマト。こうも茶色に囲まれると申し訳程度の赤色は埋もれてしまっている。
赤コーナー、ブロッコリーとエビのマヨ和え、占いグラタン、ピーマンの肉詰め。なんかマイナスイオン出てる気がする。ううん、確かにあっちと比べるとかなり茶色い。参りました。カンカンカンカーン。
途端になんかちょっと恥ずかしくなった。
いやいや、お前んちと違ってウチの母は働いとるんじゃ。かりにもお昼を一緒に食べる仲、人の弁当覗いてケチつけるのあんま良くないよ、と今後の彼女の起こしうるトラブルの芽を潰すべきだったのかもだが、私は心が狭いので確かに!𓏸𓏸ちゃんのお弁当いいなー!と会話に乗りつつ心のシャッターを下ろした。
っていうできごとをたまに思い出す。
私がガキの頃はコンビニのご飯なんて不健康!親にお弁当を作ってもらえないなんて可哀想な子だなあ、みたいな風潮があったので昼食の時間はかなり息苦しかった思い出がある。
お弁当のできでマウントとったり親からの愛情を測ったりなんて馬鹿げてたなって今では思う。
ずっとモヤッとしてたけど、一人暮らしして気づいたのは美味しいものはだいたい茶色い、ということ。人目を気にせず食べたいご飯を食べられるようになった今、私はとても自由である。
揚げ物美味しい!焼きそば美味しい!カフェラテ美味しい!ホットケーキ美味しい!
やはり、茶色い食べ物……茶色い食べ物こそが人生を彩る……
かつての友へ、そんなに物質的彩りを求めるなら着色料もりもりのジャンクフード食って虹色のクソでもしてろ。
🌈カラフル