「すげぇな、お前」
半ば呆れて目の前に盛られた白い山を見る。
「え…なんで?」
「そんなにナポリタンにチーズ掛けるやつ初めて見たわ」
「これくらい普通じゃない?」
そう言いながらまだ掛ける手をやめない。
もうほとんどオレンジ色は見えない。
雪のようにこんもり盛られた粉チーズ。
「俺もチーズは好きだけどすごいなお前」
ここまで来るとなんか笑える。
「美味しいよ。ほら」
食べてみ?と上手にくるくるとフォークに巻き取られたオレンジと白のそれを目の前に差し出してくる。
自分も同じナポリタンだしと断ろうにも有無を言わせない雰囲気の眼差しで差し出してくるからちょっと考えて目の前のフォークを咥える。
口の中に広がるまろやかな風味。
「まぁたしかに美味しくはあるよな」
その反応を見た目の前の男は満足そうに笑った。
「な!美味いだろ?お前も掛けてみ?」
すかさず俺のナポリタンにも掛けようとするから奴より早く粉チーズを手に取ったつもりだった。
が、掴んだ手の中にはそれは無く無常にも俺の前にも白い山。
「おまえ…まじ…」
もう言い返す言葉も出なくて恨めしげに自分の前のこんもりした雪山を見る。
「いいんだけど、いいんだけどさ俺の適量…超えてる」
「いいじゃんいいじゃん。俺とお揃いで食べよーよ」
にんまりと悪びれもなく笑う。
ちろりと上目遣いに睨んで。
「まぁいいけどさ。お前口にずっとケチャップ付いてるよ」
身体の大きなイケメンが口の端にケチャップ付けてる姿はなんか笑えるものがあるな。
指摘された彼は指で付いたケチャップを指で拭いペロリと舐めた。
そのまま俺の方へと手を伸ばす。
そしてその親指でそっと口元をなぞられて思わず身を引く。
「なに!?」
「お前も口元付いたままだったぞ」
そう言いながらその指をまた舐めた。
「言えよ!!」
目の前の男は焦って言い返す俺の反応に軽く笑って返す。
「いいから食べよー。冷めたら美味しさ半減しちゃうよー」
まだ動揺して口元を手の甲で押さえてる俺に。
「それとも…」
意味ありげな視線を送って。
「食べさせて欲しい?」
にんまり笑った。
「ふざけんな。勝手に1人で食ってろ」
そう言って雪山と化したナポリタンにかじりつくように口を付けた。
満足そうに見下ろしてる奴が恨めしくてアイツの雪山にタバスコをこれでもかってぐらい掛けてやった。
赤く染まる雪山。
衝撃に固まる目の前のオトコ。
イケメンはどんな表情でもかっこいいなーうんうん。
ざまぁみろ。
(雪)
夜明けが来る前に愛を語ろう。
暗闇のなか、近付くきみと。
その先に感じる熱い視線。
あなたの笑顔に溺れてこれからも過ごしたい。
窓の外にきらめく星にそっと誓いを立てる。
これから先の道のりがどんなに曲がりくねっていても僕は一生かけて君のもとへ歩いていく。
僕はそう決めたんだ。
だから。
あなたに言って欲しい。
僕を愛してると。
その鼓動を隠さないで。
夜明けが来る前に愛を語ろう。
あなたが近づいて熱い息遣いが触れて。
言葉よりも熱い絡まる視線。
心のままに抱きしめよう。
密かにあなたの為に誓いを立てる。
僕はきみの隣りを歩いて行きたい。
だから。
あなたに言って欲しい。
僕を愛してると。
(君と一緒に)
好きなうた。
もっと素敵に語源化したかった。
縁側にぽかぽかと降り注ぐ日差し。
いつもは冷たく感じる空気も暖かく感じる。
気持ちよくてそのまま外を眺めながら何をするでもなく過ごす。
お日さまの光が身体に心地よい。
思わず目を閉じてうとうとしてしまう。
するとそこに絡みつく腕。
「なに?」
振り返らなくても分かる。
「寝てたんじゃなかったの?」
よく寝てたからそのまま布団の中に置いてった悪友。
昨日遊んでてそのまま寝落ちしたので俺のベッド半分譲ってやった。
どうやらやっと起きたらしい。
「なんで起こしてくれないの?」
後ろから抱きしめるように首筋に顔を埋めて恨みごとを言ってくる。
「よく寝てたからそのままにしといてやったのに」
首筋に掛かる髪を撫でてやる。
唸るような声が聞こえた。
何を言ってるか分からない。
よしよしとさらに撫でてやると。
「起きたら1人とか寂しいやん」
「何だよそれ。そんなの彼女に言えよ」
そう応えたらさらに耳元で唸られた。
何なんだよ一体。
ぽかぽかな陽気の中男ふたりくっついて何してんだか。
そんなこんなで冬晴るる。
(冬晴れ)
決して届かないと思ってた。
あなたの隣り。
手を伸ばせばそこにいる。
これが幸せと呼ばずになんと言うのだろう。
ずっとずっと側に居たい。
側に居させて。置いてかないで。
俺に安らぎをくれた人。
永遠なんて言葉は相変わらず好きじゃない。
あるとも思ってない。
でも許す限り側に居たい。
だから。
この夢が終わるときはそっと教えて。
それまでこのひとときを噛み締めるから。
(幸せとは)
はたりはたり。
もう何も。何も。何も。
望むものはないの。
ただただそこに居るだけなの。
(静かな終わり)