太陽の下で
私は動けなくなる。
塩をぬられたなめくじみたいに。
苦しいよ。月に落として。
セーターを編んでみた。
ちくちく。
喜んでくれるかな。
セーターのプレゼントって重くないかな。
かわいいセーターを編みながら
ふと思う。
ちくちく。
あの人の事を考えるだけで胸がいっぱい。
大好きだなぁ。
まだ、まだ。
早く出来ないかな。
編み物はいつもしてるけど、
セーターは結構やった事あるけど。
あの人の事を考えてると
待ち遠しくて、待ち遠しくてたまらない。
私より一回り小さいあの人。
ふわふわして小動物みたい。
だけど、しっかり怒るとこは怒る。
あぁ、かわいくてかっこいよくて。
私だけのお姫様にでもなってくれないかな。
大好きだよ。愛してるよ。
あなたが私の事忘れても、
一生、一生。
憶えて、愛し続けるよ。
怪我をしたらすぐ駆けつけるし、
泣いていたらすぐ慰めに行くし、
辛い思いなんて絶対にさせない。
だから。
あの男より、
私を選んでよ…。
なんて思ってしまう。
あの男は
あなたのこと都合のいい女って言ってたのよ?
ねぇ、ねぇ。あなたはどれだけあの男に泣かされたの?
私が1番近くであなたの涙を見ていたから、
あなたの辛さは分かるよ。
お願い。ねぇ、
なんて言っても、あなたはあの人の事が好きなんだものね。
そもそも、こんなこと考えてるからかしら。
だから、私は…。
でも、私、あなたの笑顔が見れたらいいよ。
私、あの笑顔に惚れたんだっけ。
ね、でもさ、私も。都合のいい人でいいから。
こっち見てよ。
なんて贅沢言ったらまた困らせちゃうし、
優しさにつけこむみたいになるね。
涙で視界が揺れた。
セーターはまだ編めない。
落ちていく
ポロッと崩れた足場
元から脆くなっていた
いや、脆くさせられていた
あたしをここで殺すつもりだったのね
黒を見ながら落ちる
見下さられながら落ちる
元からあたしの事嫌いだったのね
だからなのね
誰も助けようともしてくれないのは。
夫婦を見た。
鳥さんは仲良しで、
お互い大好きなんだなって思った。
親を見た。
お母さんとお父さんは仲が悪くて、
お互い嫌いなんだなって思った。
やっぱり鳥さんの夫婦を見ると微笑ましい。
やっぱり親を見ると苦しい。
私の事もちょっとは考えてよ。
ずっと怒号が飛んでる所見せられる私の気持ちも、
兄弟の気持ちも。
親が鳥さんだったら仲良しだったのかな。
空を飛んだ鳥さんは
夫婦で別の道を進んだ。
まるでまた会えるのを確信しているかのように。
どうすればいいの?
どうしようもないのさ。
どうにかしようよ?
どうにもできないのさ。
どうかしてる?
どうにもなっていないのさ。
大丈夫、何も起きていないよ。
事件も、事故も。人も。
嫌よ、私、何もせずに死にたくないわ。
大丈夫、何も起きていないから。
あなたの意識も。本能も。
嫌よ、私、もう何もしたくないわ。
視界がチカチカするのよ。
あなたなんて最初から居ないみたいに、
点滅してあなたのいない景色が見えるのよ。
私、可笑しくなったのよ。私、くるったのよ。
やっと、やっとね。
やっと気付いたのか。
ネズミの瞳がこちらを見つめて
帰る。私の事無視しないでよ。
気付かないふりなんて出来なかったのね。
死ぬんだわ!死ぬんだわ!私!!
部屋に同じ声で慰めと癇癪が響いて。