君の目を見つめると
吸い込まれそうとかよくいうけれど
本当にきれいな目って
世の中にはあるんだね
大好きだよ
猫の目がこんなに魅惑的だなんて
君が来てくれるまで知らなかった
いつまでもいつまでも飽きずに見入ってしまう
そして焦れた君に甘咬みされる
どちらが飼い主かもう分からない
星空の下を歩いて行った
星明かりを頼りに歩いて行った
ふたり
指を絡めあって
時折顔を見合わせて笑った
どこまで行くの
お前の好きなだけ遠くへ
唸るような満天の星
祝福の道が
どこまでもどこまでも続く
これがふたりのゴール
そして永遠の愛
それでいいです
山田さんの口癖だった。
それがいいんです
小さな町の公民館。やってくるのは年配者向けサークル活動の常連さんくらいだ。それでもパートの当初はいろいろやらかした。利用者さんに口汚く罵られたこともある(お年寄りは容赦がないのだ)
落ち込んでしょんぼりしていると、ひとりで囲碁を打ちに来た山田さんが声を掛けてくれた。
私こんなんでいいのでしょうか
それでいいですよ
でも失敗ばかりで
一生懸命じゃないですか。それがいいんですよ
でも……
ヒューマンエラーは誰だってします。そこをフォローするのは、その人の一生懸命さだとわたしは思いますよ
山田さん、なんか凄い事おっしゃいますね
結局それが遠回りで不器用だけど、一番の方法なのだと言うことを、長い間働いているうちに実感していった。
山田さんはもう来ない。
遠い街の施設で去年の秋に亡くなったと聞いた。
それでいいんですよ
あの優しい肯定の言葉は今も私を支えて続けてくれる。
心残りは1つだけ
もっと惜しみなく傷つけばよかった
怖気づいてあと一歩が踏み出せなかった
無難で生温い人生
でこぼこがない分つまらない
あの時あなたの手を取っていれば
どんな人生があったのだろう
そんなことを考えている
大切なものが私の心を弱くして、
いろんな柵でがんじがらめにするの
だからみんな棄てることにしたわ
もう容赦なく綺麗サッパリとね
そうしたら案外、棄てられた方は平気でね
私それほど相手からは大切に思われてなかったみたい
そうわかったら、急に気持ちが楽になってね
いろんなことが、もうどうでもよくなったの
いちばん大切なのは自分だって気がついたのよ