伝えたいことは何もありません。
私のことは放っておいてください。
分かってもらおうなんて全く、思いません。分かってもらいたくなんかありません。
少しでも分かってもらえたと誤解すれば、きっとそれに縋ろうとするから。
そういう醜態は晒したくない訳です。

この場所であの人はいつも立っていたのですよ。身動きひとつせず、大きな眼で遠くを見つめて。
声を掛けても何も答えません。こちらを見ようともしません。ただじっと見つめる先は何もない空でした。
ある日、唐突にあの人の姿は消えました。それっきりです。それからどんなに時が経っても、この場所にあの人は現れませんでした。
泣いてますね？

これがすべてです。それっきりです。あれっきりです。

誰もがみんな認めてもらいたいと思っている。
こんな深夜に、眠ることも出来ず、スマホをいじっている私はその最たるものだ。
書きたいから書くのではなかったか。頭の中の映像を再現したいのではなかったのか。それがいつの間にか、承認欲求に代わってしまっている。
こんな夜はもう横になるしかない。横たわって、また力が戻ってくるのを待つしかないのだ。