大好きな人と喧嘩した。
些細なことで始まった口論は、遠慮のない仲で次第にエスカレートして。
「アナタなんて大キライ!」
空気が凍る。
言ってしまった言葉は取り消せない。
「ちょっと頭を冷やしてくる」アナタが背を向ける。
違うの。分かり合えない悲しみが逆さまの言葉となって溢れただけ。
大好き。大キライ。
一緒に居たいと告げる、アナタへの愛の言葉たち。
#愛を叫ぶ
理科の授業でモンシロチョウを育てたことがある。
幼虫がサナギから蝶になるまでを観察したのだけれど、羽化するところは神秘的で、子供心に厳かな気持ちになったことを憶えている。
蝶はサナギの中で身体をドロドロにして成体になる。
運命の人に出会うために自分自身を溶かして作り変える。
自然界の法則だけど、そこには膨大なエネルギーと強い意志があるように思う。
一生に一度の運命の恋。
この身を捧げるほどの相手に出会ったとき、
私の中に眠っている熱量が目覚めるのだろうか。
今はまだ想像もできないけれど。
#モンシロチョウ
それは運命の出会い。
25歳の誕生日。
半年に一度くらい訪れるショッピングモールの。
映画まで時間があったからふらりと立ち寄ったペットショップ。
ほかの子犬よりも一周りほども小さな身体で、自分の頭くらいあるおもちゃに一心不乱に挑む姿は、可愛いのに凛々しくて。
ガラス越しにずっと見てた。
「抱っこしてみますか?」
店員さんからの誘惑に抗えず。
そっと抱きしめたその温かさ。
甘えることもなく腕の中でじっと納まる姿に離せなくなってしまった。
それからの生活は常に君が中心。
ツンデレで気まぐれで、猫のような君。
見ているだけで幸せな気持ちにしてくれる。
何十回、何百回と抱きしめしているけれど。
25歳のあの日に抱きしめた愛おしさは、きっと一生の宝物。
#忘れられない、いつまでも
毎年、年末には翌年一年の占い本が書店に並ぶ。
占い好きの私は、一通り立ち読みして翌年の傾向を確認しつつ、お気に入りの本を購入する。
今年はどうやら恋愛運が好調のようだ。
といっても、今のところ好きな人に心当たりはない。
大人になると恋愛に臆病になる。
ちょっと好きかな、と思う人がいても、いろいろと考えてしまって無意識にセーブしてしまう。
もしも。
一年後の私に恋人が居て。結婚してたりしたら。
それは、私であって私ではない私。別人の私。
一年後の私は書店に並ぶ占い本を素通りしているのかもしれない。
#一年後
初めて恋を自覚したのは6才頃。
相手は保育園から一緒の男の子。
実際のところ、いつから好きだったのかなんて分からないけど、気づいたら好きになっていた。
恋だけど、キュンとしたりドキドキしたりなんてことはなくて、ただ好きが暴走して、いつも大好きをアピールしていた。
小学校の途中で転校したから、いつの間にか自然消滅。
あれは私の初恋だったのだろうか。
#初恋の日