3/17/2023, 1:56:44 PM
『泣かないよ』
優しいあの眼差しを…僕は忘れはしないだろう。
これまでの人生、幸せだと思った事がなかった。お母さんは病気で死んで「大丈夫だ、帰ってくる」と言って出て行ったお父さんも…結局は帰ってくる事はなかった。
だから僕は"誰かを信じる"事をやめたのだ。
もう誰の目も見たくなかった。
誰にも優しくされたくなかった。
怖かったんだ。優しくされてから捨てられる痛みを知っているからこそ余計に…。
でも貴方は違った。
僕の事を理解しようとしてくれて、「お前を…守ってやる」そう言ってくれた。
信じても良いのだろうか、少しばかり不安になる僕に貴方は今までにないくらいの優しい眼差しで…。
「お前を守ってやる、必ず…だからもう泣くな」
はっきりと力強く僕の瞳を見据えて、そう言った。
その瞳の奥には闇など一切なくどこまでも澄み切っていて綺麗だった。
「うん……僕、泣かないよ」
貴方なら信じられる、僕はそう思った。