/フラワー
「知ってる? この菊って食べられるんだよ」
そう得意気に知識を披露した先輩は、刺身に添えられた菊を丸ごと口に放り込んだ。
食べるのは花びらだけなんだけどな、毒性はないから全部食べられはするけど。生食だとやっぱり苦味が強いんじゃないかな。
きっと今ごろ口の中は苦味でいっぱいだろうに顔に出さない先輩はすごいな、と変なところで感心してしまった。
菊の花は、醤油に花びらだけを散らして刺身と一緒に食べるのが一般的だ。私の友人は箸で摘んだ菊をそのまま醤油に浸して花びらだけを食んでいたけれど。
食べられる花、エディブルフラワーは最近有名になってきた気がする。先輩はそれを知る過程で、刺身などに添えられている菊が食べられることに気づいたんだと思う。
食用花は美味しくないという記憶だけ刻まれて終わってしまうのはもったいない。どうせなら正しい知識を学んでほしいと思うけど、今指摘するのは良くないだろうか。
今度エディブルフラワーの専門店にでも誘ってみようか。
/新しい地図
保留!
/好きだよ
それは小さな後悔。
好きだよ、って、たった一言が言えなくて。
/桜
朝早くからビニール袋を片手に家を出る。
閉じられた学校の門をコソコソとよじ登り、昇降口手前まで続く桜並木を目指す。
ヒラヒラと風に吹かれて落ちてくる桜の花びらを、ビニール袋を広げてうまく回収する。たまに地面に落ちてる中からも綺麗な花びらを見つけて拾う。
そうして一時間ほど奮闘していれば、教頭が一番にやって来るので見つからないように裏庭に移動する。
裏庭にも桜の木があるけどあそこはダメだ。毎年毛虫でいっぱいになるから。
友達が登校して来る時間に合わせて、昇降口へ向かう。
ビニール袋をひっくり返すシミュレーションは何回もしてきた。マジギレされる覚悟もばっちり決めてきた。
あとは友達の頭から桜を降らせるだけ。
そんないつかの日の記憶。
/君と
保留!