右腕が大事だった。テセウスの船を知ってる?私はどこまで私じゃなくなったら逸脱するのだろうか。
絵が好きだった。この手のひらを幸せに使って絵を描いていた。いつか思う。事故で私は絵を描けなくなったら、右腕がなくなったら、脳に異常をきたしたら、どこまで私といえるのか。私は化け物になりたい。私は絵を描きたい。でも絵を描いている人なんて星の数いてその中で太陽になるなんて一握りで………
太陽は暖かった。草原は腐るほど良い匂いがした。地面の湿った土に手を重ねるとほろほろと笑うように崩れていった。わははは、私は何がしたかったんだろうか。幸せになりたい。幸せに、なりたい。
リオ
貴方はうさぎとして可愛いと私は思う。丸い黒目に毛先が白く垂れた耳、まつげは茶色かった。ルッキズムがある世界だったらその茶色のぶちぶちの毛皮は好かれないかもしれないけれど貴方にはルッキズムが無かった。乾いた野菜をもしゃもしゃ咀嚼する。食べているときの横顔が生命って感じでほんとうに嫌だ。居るんだね、生きているんだね。頭が悪いから眠いときは誰にでもわかるくらいぼーっとする。嬉しいときははしゃぐ。私はそんな貴方にいつも嫌がらせをする。もう貴方なんてすぐに失くなればいいと思う。ぱさぱさと瞬きのたびにまつげを重ね可愛らしく在る貴方の寿命は8倍早く、春を告げる合図は貴方の死かもしれないと思った。死なないで。いつか貴方の遺体が手の中でできると思うと心が冷たくなっていくようだった。リオ、死なないで。
カウンセラーの先生が男だから家でカウンセリング
できない
寒い。自殺しようと思って十五の冬にドラッグストアに行ったけれど睡眠薬が無かったから紫のチークを買った。ラメが多すぎてあんまし可愛くない。カウンセラーの先生は男だからメイクをしない。
寒い。先生が男だから家でカウンセリングできない。お母さん。お母さんは、カウンセラーを男で私を女だと思っている。星が綺麗だ。でも貴方は気持ち悪い。空が綺麗だ。
そんな話をされた二年前を思い出してチークを買った。638円税込。とても寒い。
駅のホームにいる。たまに嫌われたいと思う。いやな話。
空は見上げなくていいほど明るいのが分かった。わたしは泣こうか迷った。電車がカーテンを閉めるように通り過ぎるたびに涙を閉じ込める量が増える。
カーテン。
記憶の中にあるカーテンはいつも嫌な音だった。私は悪くないとずうっと思っている。
日記と言っても他人に公開する以上心の内を書くのは難しいので、ある意味閉ざされた日記