向かい合わせ
私と君は向かい合わせに座ることが多かった。
いつものお昼ご飯とか遊びに行ったときとか。
席替えしても、隣になったことは一度もない。
横に並んで、歩いたことも少ない。大体、他の友達と前か後ろを歩いてる。
近いけど、少し遠いと感じる距離。嫌われてるのかと思ったこともあるけど、そうじゃないことだけはわかる。
私の気にしすぎ?
でも、それが嫌だった。もっと君の近いところに居たい
だから、観覧車という2人っきりの空間を使った。
その機会が訪れたのは偶々だったけど。
観覧車の中でも、君は向かいに座った。どうやって隣にいこうか考えても、良い案は思いつかない。
ねぇ、隣座っても良い?
だからもう直球で聞いた。
なんで?
そっちに座ると海が綺麗に見えるから。
…いいよ。
君がちょっと右にズレたのを見てから、隣に座る。
肩が触れるくらいの至近距離。
綺麗な景色を見ながら、好きな人に触れるのってどきどきするなぁ、と初心なことを考える。
ちらりと横を見ると、体を硬直させたまま、下を向いていた。綺麗な黒い髪からは、赤くなった耳が見えた。
ねぇ————好きだよ。
付き合うまで、後0秒。
鏡
鏡を見たいと思わない。
だって自分の嫌いな顔が映るから。
自分の顔が嫌いだとを思ってる自分は人を見た目で判断する嫌な奴なんだなぁって思って、
また自分が嫌いになって、そして自己嫌悪に陥る。
まさに負のループ。
いつまでも捨てられないもの
いつまでも捨てられないものなんかない。
捨てられないと思ってた夢を今まで簡単に捨ててきた。
いつまでも捨てられないものがあって、
それにずっと執着し続けられる人が羨ましい。
そういう人になりたかった。
君の奏でる音楽
音楽に力などないと思っていた。
所詮、ただの音でしかないのだから。
でも、君の奏でる音楽を聴いて、俺の考えは間違っていたと思い知らされた。
音楽はいろんな色を持っていて、その色によって
人の感情は簡単に動かされる。
両親が他界して、ずっと泣き続けていた時も、君の演奏を聴くだけで、また頑張ろう、生きていけると思えた。
そんな、俺に大きな影響を与えた彼女から、
音楽が嫌いになった
と、聞いた時は驚いた。
俺が、初めて君の演奏を聴いた後、すごいと言って拍手した時の、君の満足げな笑顔が忘れられない。
音楽には力があると思い知らされた俺が、
俺の演奏で君にまた、音楽が大好きだと言わせてやる。
—2人しかいないコンサートホールで、ピアノが鳴った。
麦わら帽子 後でなんか書きたい