『さあ行こう』
さあ行こう
すぐ行こう
誘惑だらけのこの道を
脇目もふらず
子どもの手を引き、足早に
時間は待ってくれないよ
え?ガチャやりたい?
何を言っているのかわからないよ
ガチャガチャなんて見えない見えない
え?たくさんあるって?
そんなまさか、気のせい気のせい
さあ行こう
早く通り過ぎよう
『水たまりに映る空』
雨上がり、道路にあった水たまりに空がキラキラと光ながら映っていた。青い空に雲が流れているのがわかる。
キレイ。
ふと足を止めて見入ってしまった。
すると次の瞬間、一台の車が勢いよく水たまりの上を通り過ぎていった。
ばっしゃーーん!という音とともに、水が美しい弧を描き私の足下を思い切り濡らした。
うーわ…。
びしょびしょだわ。
最悪。もう帰ろう。
こうなったらもういいや。
私は子どものように水たまりにじゃぶじゃぶと入っていった。
『恋か、愛か、それとも』
恋か愛か…どっちでもよくない?
自分も相手も大切にできるなら、
どちらも正解だと思う。
たとえ思うような結末にならなかったとしても。
危ないのは執着。
恋愛と勘違いしやすい。
どちらかが犠牲になるなら、
それはもう恋や愛とは別物。
でも経験してみないと、その違いはわからなかったりもするから、みんなどんどん恋愛したらいい。
特に若いうちは。
年齢を重ねてからの、愛情と勘違いした執着は、泥沼にはまってしまいそうだから。
そのときめきは恋か、愛か、それとも…本当は動悸かも。
『約束だよ』
友達の様子が少しおかしい。
小さなことに異常にこだわっていたり、話していてもこちらの話が届いていないような、少し情緒不安定な感じ。
もともとは、頭の回転が速く、冗談ばかり言っているような明るい子だったのに。
私はそんな彼女に連絡をし、遊ぶ約束をする。
映画を一緒に見に行こう、とか、ランチをして散歩、とか。なんでもいい。
小さな約束をたくさんする。
楽しみにしてるね!とあえて元気に。
彼女が孤独にならないように。
自分だけの世界にいってしまわないように。
約束だよ。
いなくならないでね。
お願いだから。
『傘の中の秘密』
病院からの帰り道。
雨の中、息子の手を握りしめたまま、ぼんやりと歩いていた。
夫に病気が見つかり、手術をしなくてはいけなくなってしまったのだ。
手術のこと、お金のこと、これからのこと、幼い子どもを一人で見ること、すべてが不安だった。
ふと息子を見ると、不安そうに私の顔を見上げている。いけない。思い詰めた顔をしてしまっていたのかもしれない。
息子を安心させるように微笑んでみる。
すると、息子は大きな目をぱちくりとさせ、私の手をぎゅっと握り返すと、舌足らずな言葉で
「おかしゃん、だーいしゅき!」
と言った。
鼻の奥がツンとした。
そうだ、私がしっかりしなくちゃ。
「ありがと。お母さんも大好きだよ。」
うまく笑えたかな。
それだけ言うと、慌てて傘で顔を隠した。
不安をこの子に気付かれてはいけない。ふいに落ちてしまった涙は私だけの秘密。