2/9/2024, 2:17:45 PM
むせるようなバラの香り。
父のビニールハウスで黄色のバラを探す。
視界いっぱいの赤。
ポツリポツリと黄色の点がある。
コイツは先祖返りだと父が教えてくれた。
赤の半分くらいの花弁、でも香りはすごくつよい。
小さくて売れないから好きにしていいと言われた。
だからボクは黄色を集めた。
何も考えていなかった。
ただ黄色がボクのものになったのがうれしかった。
教室に飾ろうと思いついたのは両手いっぱい黄色を集めてからだった。
両手がふさがったまま教室の戸を開けようと悪戦苦闘してるボクに笑いながらキミが声をかけた。
「きれいな黄色ね。」
ほめられてボクはうれしかった。
だから両手を差し出した。
「あげるよ。」
あっけにとられた顔のキミ。
「こんなにもらえないわ。」
そう言って一本の黄色を抜きとった。
「いっ」
「ああ、ごめん。トゲを摘んでおけばよかった。」
「いいのよ、トゲを取ったらかわいそうよ。」
笑いながら指を舐めるキミ。
なんだろう、すごくうれしかった。
2/9/2024, 1:46:42 PM
いつもと同じ笑顔だった。
ボクにはそう思えた。
マヌケなボクは気づかなかった。
気づけなかった。
キミはボクに笑顔しか見せない。
だからボクは。
いや、それは言い訳にならない。
夏休み最後にの日
「ごめんね。」
キミに言われた。
「どうして?」
「ごめんね。」
重ねて言われた。
ボクだまってしまった。