『柔らかい雨』
ザーザーと朝っぱらからうるさい。その正体は言うまでもなく“雨”。学校へ行くときも、授業中も、部活のときだってザーザー、ザーザー…。うるさいったらありゃしない。
俺「チッ!あ~もう!」
今日の部活は雨だからと室内に変更だ。ふざけんなよ、あ~イライラする!
雄「おい、何イライラしてんだよ笑
まさか、紗綾(さや)に会えなくなったからっ
てイライラしてんのか?」
ニヤニヤしながら聞いてくるのは幼なじみの雄太(ゆうた)
俺「っるせーよ」
ようやく部活が終わった。もう空は真っ暗。さすが冬だな。でも相変わらず雨は降ってる。
俺「傘…あ、今日チャリで来たんだった、しかも
カッパなんてねーよ。」
諦めてびしょびしょになりながら帰るか…
帰ったらまた母さんがうるさいのかな、何で世界にはこう、うるさい奴らしかいないんだろう。
体に叩きつけてくる雨は次第に強くなる。少し早歩きで帰らないと。スタスタと歩いているうちに、ふと気がついた…雨が当たっていない。頭の上を見ると大きな傘に覆われていた。
俺「え、傘…?って、うわっ!!さ、紗綾!?」
紗「……」
紗綾は喋らない、…正確には喋れないのかもしれない。ただ静かに傘を差してくれた。
俺「あ、ありがとな。ってか何でこんな時間に…
もう18時過ぎてるぞ?部活か?」
紗「……」
?「紗綾ー!!紗綾ー!!」
誰かが紗綾を呼んでいる。
紗姉「いた!紗綾…と蘭くん?」
俺「え~っと…誰すか?」
紗姉「ごめんね笑、紗綾の姉だよ。紗綾ってば
蘭くん今日自転車で来てたのに雨具持って
なかった!なんて言って、走って出てったの
笑。本当に焦ったよ…」
俺「え、そうなの?あ、ありがとう。」
紗「……」
紗姉「紗綾もよかったって思ってるよ。家まで
送ってくよ!一緒に行こ!」
俺「ど、どうも…」
さっきまでは当たりが強かった雨、でもその雨にも少し柔らかさが増した気がした。
END
2024.11.6