昼と夜の曖昧な境界
薄い光がまだ眠っている街の灯りと混じりながら
部屋の縁まで到達する

窓際に置かれたウランガラスのボウルが
最初に朝を感知して蛍光を発する
まだ他には何も動かない
静かな夜明け




: 静かな夜明け

祝福と共に受け取り 両腕で抱えた花束は
予想外の重量感だった

花そのものはいずれ枯れ、写真の中だけになっても
自分の体が今でも覚えている

あの抱えたときの幸せな重さと
ふんわりと大事に支えていた手の感触を
泣きそうな気持ちとセットで
一生忘れられない、永遠の花束を



: 永遠の花束

また会う前提のバイバイ、
じゃない方のバイバイがだめだ

私はお別れごとに弱い
いつまでも喪失感に折り合いがつけられない
モノ、無機物にすら感情移入しすぎるのは分かってる
どれも愛おしい
ゆえに、そこに在った愛ごとなくなってしまうことに耐えられない

愛は心に残る？
否！心ごと消滅して、悲しみだけがまた一つ増える
ひとつひとつのどれもが大切な思い出に形を変える
その累積していく思い出に耐えられない





: バイバイ

迷子と蒸発の違いは、帰る意思の有無だけど
どちらも「旅の途中」と言ってしまう事で
悲壮感が消えて前向きに見えるのよいよね




: 旅の途中

両手の指を組んで窓を作る
カメラのファインダーのように虚空を覗くと
まだ知らない君と目が合って

向こうも「おゃ？」という顔をした
狐の窓が開いたんだなとわかった




: まだ知らない君