「私が死んでも代わりはいるわ」
ひと一人の居場所なんて、あっという間に時に流されてしまう
「でも、あなたにとってはそうではないのね」
私にとってのあなたがそうであるように
星がいくつあっても、太陽はたった一つ
太陽の代わりは誰にもできない
歓声と罵倒が飛び交う広場
一人の女が今まさに処刑されようとしていた
正午の鐘の音とともに振り下ろされた処刑人の刃は、一度では首を切断できず、二度、三度と振り下ろされる
何度目かの振り下ろしでようやく切断した首を処刑人が高く掲げる
民衆は悪を断じたエンターテイメントに熱狂して、雄叫びをあげようとした
女の顔を見るまでは
この世に狂っていない人はいないという
ある人が言うには、唯一、人に許された狂気は正気だそうな
毎日働いて寝るだけの生活をしていると、納得できる説だ
この世は狂ってる
そう思えばなんとなく心が楽になった
ならば、この狂気の世界から目が覚める前に、狂えるだけ狂ってしまおう
踊る阿呆に見る阿呆
同じ阿呆なら踊らにゃ損損
首にひっかけるつもりだった天井に繋がる輪っかを離した
人生の終わりを考える時、想像するのは年老いた自分が病室のベッドに腰掛ける姿だ
事故とか事件とか、命を落とす可能性は身近にあるのに、無意識に自分は最後まで生きられると思っている
明日、もし晴れたら
仕事を休んで海に行こう
明日、もし晴れたら
あの人にこの気持ちを伝えてみよう
明日、もし晴れたら
くわがたを探しに早起きしよう
明日、もし
明日、もし
明日、もし
「もし」に希望をつめこんで、
叶わないたびに安堵した
仕事を休むことなんてできないし
この気持ちは墓まで持っていく
くわがたは挟まれるのが怖い
キラキラきらめく明日に手を伸ばす癖に
触れたとたんに、きらめきが無くなってしまうのではと怖くなる
天気予報の降水確率100%の文字を見なければ、わたしは希望を描けない
「明日、もし晴れたら」