友達が涙を流してこう言った。
「転校するの、」
言葉が出なかった。
「なーんてね!嘘だよ!」
この時はまだしらない。来年のエイプリルフールに
友達が転校してしまうことを。
なーんてね。今でも同じ学校に通っているよ。
友達は頭がいい。私は家族が優しい。
反対に友達の家族は何も褒めてくれない。
私は頭が良くない。
「家族が入れ変わればいいのに。」
お互いにずっとそう思ってた。
ある日友達の家族が優しくなった。
それと引き換えに勉強が出来なくなった。
ある日私の頭が良くなった。
それと引き換えに家族は何も褒めてくれなくなった。
「家族が入れ変わればいいのに。」
お互いにずっとそう思ってた。
ないものねだり
友達は怖がりだ。
すぐに泣く。
みんなはその子をからかう。
まだみんなは知らない。
その子は大人になって警察官になることを。
友達の妹。
とても純粋な女の子。
元気いっぱいな女の子。
そんな妹が泣いた。静かにぽろぽろと泣いた。
まるで目から星が溢れるように。
【星が溢れる】
今年の春、吹奏楽部群馬県大会があった。
不安でいっぱいの部員。顧問も心配そうだった。
初めて立つステージは怖かった。緊張した。ステージ全体に広がる金管楽器の金属の匂い。本番だという実感が湧く。お客さんがこちらを見る。心臓の音が聞こえる。指揮者が指揮棒を振り、部員が一体となり美しい曲を奏でる。ただただ、お客さんにいい曲を聞かせてあげたい。そう思った。
演奏が終っても音は反響していた。やりきったという達成感、反対に上手く演奏をできたのかという不安。複雑な気持ちだ。
結果発表の時。皆、息を飲む。結果は1位だった。自分は正直1位は取れないと思っていた。後悔しかなかった。しかし「1位」と聞き、後悔が消えた。良かったと思えた。
今は首都圏大会に向けて練習している。あの時の後悔をバネに今も吹き続ける。